ミカエルの鼓動

#漢


▼ミカエルの鼓動 / 柚月裕子(Kindle版)

柚月裕子の新作。
おそらくデビュー作「臨床心理」以来の医療モノなのだが、これが・・・。

医療ミステリーと言えばその通りなのだが、内容は気合いの入ったハー
ドボイルドで、ゴツゴツとした人間ドラマ。こういうのは多少ハートフ
ルな要素が入るのが常套手段であり、そういうところで肩の力を抜ける
のだが、さすがは柚月裕子、「遊び」一切入れていないところが凄い。

さらに、医療モノと言ってもかなり専門性に寄った内容。普段なら間違
っても意識しない病気・術式のオンパレードで、普通の作家なら退屈を
覚えても仕方無いのだが、まぁとにかく「読ませる」さぁ、付いて来
てみろよ、と挑発されているかのような文章は、氏の真骨頂だと思う。

そして相変わらずの漢臭さ(^^;)。
こういうテイストの作品だけを書いているワケでは無いのは知っている
が、医療分野でも「孤狼の血」シリーズと同等の、とんでもないレベル
迫力が伝わってくる。コレを女性が書いている、というのを俄に信じ
ることが出来ない。

あまりのハードさで読むのが辛い人は居ると思うが、それでも絶対に最
後まで読むべき。柚月裕子の凄まじさを堪能して欲しい。

PEPEER’S GHOST

#ネコジゴハンター


▼ペッパーズ・ゴースト / 伊坂幸太郎

伊坂幸太郎の新作。
伊坂先生、コンスタントなリリースをしてくれるありがたい作家なのだ
けど、今回は前作「逆ソクラテス」から、珍しく1年半も空いた。
このブランクで禁断症状の出た人は多いかと。
もちろん、僕もその一人である。

細かな感想を書く前に、この本を読んでいる時の僕の様子(^^;)などを。
僕はいったん本を読み始めると、結構なスピードですぐに読み終えてし
まう速読家なのだが、この本はかなり特殊な読み方を余儀なくされた。
ページを開き始めてから、読了までに至った日数はなんと7日間。一冊
の本にこれだけ時間をかけた覚えはココ10年皆無であり、全く以て
“らしくない”振る舞いなのだが、その原因はもう本当に単純明快。あま
りにおもしろくて、読み終わってしまうのが惜しい、という子どもの様
な感覚に陥ってしまったのである。

・・・そんな『凄い本』の内容は、いわゆる【能力者】が主人公。
氏の代表作である「魔王」の兄弟と同様、ちょっとだけ異様な超能力
有する普通の中学校教諭が、あれよあれよと言う間に大きな事件に巻き
込まれていくお話。全編で伊坂節全開の、ファンタジーエンターテイン
メント作品である。

いろんなところに様々な【無理】があるキャラ設定をしているにも関わ
らず、登場人物たちの言動に全く無理が無い。結構な長編をこの状況の
まま書ききってしまうテクニックは相変わらず見事。こういう芸当の出
来る作家、伊坂幸太郎の他には・・・尾田栄一郎くらいじゃないだろうか?

とにかく先週の一週間、本当に幸せな時間をいただきました!
そしてネコジゴハンターとその依頼者に、拍手と祝福とリスペクトを!

私が見た未来

#Prediction


▼私が見た未来 完全版 / たつき諒(Kindle版)

珍しくマンガのレビュー。
と言っても、純粋なマンガだけの作品ではなく、最近都市伝説界隈
で話題になっている【予言書】完全版。おおよその流れを説明す
るとこんな感じ。

この本は1999年に発売され、既に絶版となっていたモノが完全版
として復刻されたモノ。古本市場では10万円近いプレミアが付いて
いるのだが、その原因が表紙に書かれた「大災害は2011年3月」
いう文言。東日本大震災を言い当てている、として話題になった。

作者のたつき諒先生は『予知夢』を見る体質らしい。この本に収録
されている作品によると、フレディ・マーキュリーの死や、自身の
身近で起こったことを夢で見ているらしい。ソレをしっかり作品化
しているのが凄いところなのだが、もちろん価値が出たのは最近。

絵は昔の少女マンガ然としたタッチだし、ストーリーや構成もいわ
ゆる怪奇・ミステリー系短編のスタンダード。正直インパクトには
乏しく、絶版になったのも当然だと思われる。

しかし、表紙に書いてある大災害が表記通りの期日に起こったのは
事実。しかも、マンガの中に書いてある「津波」は東日本大震災の
ことではなく、2025年7月に起こる災害、と新たな予言まで。

・・・一度しっかり当てているから、全てを否定するワケにはいかない
し、途中まで完全に信じて読んでいたのだが、僕の信用を思いっきり
崩壊させる記述(^^;)があった。

どうやらたつき先生の前世は、僕が制定する「いくら奇跡を起こそ
うとも全く信用出来ない胡散臭い人ランキング」1位にずっと居座
り続けている人のだったらしい(^^;)。コレを公言されてしまうと、
本当に萎えちゃうんだよなぁ・・・。

もし2025年に何かが起こるのならたつき先生、アナタは彼を超えて
います。もう名前出さない方がいいと思うな、あの人の。

EVIL

#時をかける新人 #正規採用


▼EVIL 東京駅おもてうら交番・堀北恵平 / 内藤了(Kindle版)

内藤了東京駅おもてうら交番・堀北恵平シリーズ第六弾
新人女性警察官・堀北恵平、通称ケッペーちゃんも遂に正規採用
大好きな東京駅おもて交番に配属され、張り切っているところ。

おもて交番に道を聞きに来た老婆の対応をするケッペーちゃん。
そこで突然起こった通り魔事件。刃物を振りかざす犯人から決死で
老婆を守ったケッペーちゃんだが、既に老婆の姿は無し。交番には
不信な風呂敷包みが。中身を確認すると・・・といった内容。

タイトルの「EVIL」に若干の塩っぽさ(^^;)は感じるのだが、ソレは
内藤先生の所為ではなく、キング・オブ・ダークネスの所為(^^;)。
後に良い雰囲気になってくれるといいんだけど、無理っぽいなぁ・・・。

今回起こる事件はこれまでと比較すればかなり大人しめ。全5冊を使
ってジワジワと攻めてきた「猟奇」は一旦お休みのようだが、代わり
にこれまで続いてきた過去回想がクライマックス。次回作あたりから
全ての伏線回収が始まりそうな気配。

驚いたことに、今回はうら交番・柏村氏の出番なし。さすがにコレは
ちょっと寂しいなぁ・・・。まぁ、おそらく次回作に必要な行程。気に
なるなぁ、続きが。

DOUBT

#時をかける新人 #真実吐露


▼DOUBT 東京駅おもてうら交番・堀北恵平 / 内藤了(Kindle版)

内藤了東京駅おもてうら交番・堀北恵平シリーズ第五弾
新人女性警察官・堀北恵平、通称ケッペーちゃんの研修も最終段階
入り、現在は警察学校で最後の仕上げに取りかかっているところ。

コロナ禍となった東京が舞台。研修途中に立ち寄った東京駅近辺で、
馴染みのホームレス連中から「仲間が減っている」という情報を受け
たケッペーちゃん。同じ頃、先輩刑事の平野清掃工場ゴミ集積プ
ールで複数の遺体を発見、その捜査に当たっていて・・・という感じ。

今回起こる犯罪の内容はもう誰が何を言おうと完全に「猟奇」
凄いのはこの凄惨過ぎる犯罪がある意味でカジュアルに行われている
ことであり、起きた事件よりもその動機の部分に戦慄が走る。もちろ
ん小説内のフィクションだが、今のご時世なら同じ事が起きても全く
不思議は無い。そういう意味で非常に怖い作品だった。

今回はうら交番柏村とケッペーちゃんとの【決定的】と思える会話
が収録されている。コレがあった、ということはもう物語も終盤
クライマックスまでどう盛り上げるか、興味を持って注目したい。

・・・上記、今年の春に書いてます(^^;)。
何故アップし忘れたんだろうか??