▼真説・佐山サトル タイガーマスクと呼ばれた男 / 田崎健太
初代タイガーマスクとして一世を風靡した佐山サトルの評伝。
著者の田崎健太とは、あの「真説・長州力」を書いたノンフィクション作
家。あの本の好き・嫌いはともかく、取材力に関しては確実に信用出来る
仕事人であることは間違い無い。
・・・いやぁ、凄かった。
まずハードカバーの単行本で500ページを超える物量だけでも凄い。これ
に加え、佐山本人や周辺の人々に丁寧に取材がなされており、いい加減な
記述・断定的な記述の類いが一切無い。内容に関しては、これまでいろい
ろなところで書かれてきた初代タイガーや佐山のエピソードとほぼ相違な
く、誤解を恐れずに言うのなら、壮大な「まとめ」を読んでいる気分。だ
けど・・・。
もし田崎さんで無い人間が「まとめていた」のであれば、そんなこととっ
くに知ってたぜ!的な、妙な否定を伴った感想しか出てこなかった気がす
る。キッチリ仕事の出来る作家さんが書いてくれるからこそ、僕らが特別
な感情を持たざるを得ない「唯一無二の存在」の物語を楽しむことが出来
た、と思う。田崎さん、本当に感謝します。
そして改めて、佐山サトルという男の「天才ぶり」を思い知った。その上
で、佐山サトルというプロレスラー・格闘家が、今の僕にどれだけの影響
を与えてくれたのかも再確認出来た。
タイガーマスクに熱狂したこと、旧UWFでゾクゾクしたこと、シューティ
ングで「恐ろしい競技が始まった」と感じたこと等を昨日のことのように
思い出す。何より、本人の意には沿わないのかもしれないが、僕が変わら
ずに大好きなプロレスの世界に戻ってきてくれた佐山には、本当に感謝し
か無い。
願わくば、今後の佐山サトルの人生に正当な評価があることを望む。
佐山サトルの存在に人生を変えられた人間は、本当にたくさん居る筈なの
だから。