#螺旋プロジェクト
螺旋プロジェクト第五弾その2。
そしてこのプロジェクトの最終作品でもあるこの物語の舞台は「未来」。
この大事なアンカーの役目を引き受けた吉田篤弘の作品はこれまで読ん
だことが無く、少々不安を感じながら読み始めたのだが・・・。
ちょっと驚いた。
何に驚いたのかと言うと、この作品に前の7作品全ての要素が少しずつ
採り込まれていること。更にその中でもいちばんクセが強い(^^;)と思
われる伊坂幸太郎の世界観を見事過ぎる手法でパクり(表現悪いけど褒
め言葉のつもり)、しっかりとオリジナルの物語にしてしまっている。
2095年、東京が「壁で分断されている世界」、という発想がまず面白
いし、世界中が不眠症になっている、という設定が更に興味をそそる。
主要登場人物がかなり多いにも関わらず、話がとっちらからずに最後ま
で読めてしまったのだから、読後は完全に舌を巻いた。
もちろん、螺旋プロジェクトの主題である「海vs山」にもしっかりケリ
が付いている。曲者揃いの作家たちを向こうに回し、大納得のラストを
魅せてくれたのだから、この作家の実力もまた本物。大団円と言って良
いかと。
・・・いい企画だったなぁ、螺旋プロジェクト。
正直、幾つかキツい作品もあった(^^;)が、これまで知らなかったすば
らしい作家さんも出会え、読書の幅も広がった。こういう有意義な企画
なら何度やって貰っても構わない。いや、すぐに第二弾を企画して欲し
いところ。
8組9名の作家さん、本当にありがとうございました!
そしてこのプロジェクトを企画した中央公論社・小説BOC編集部にも大
きな感謝を。次の仕掛けを、心より楽しみにしております!