暴虎の牙

#暴対法


▼暴虎の牙 / 柚月裕子(Kindle版)

柚月裕子「孤狼の血」シリーズ最新作、そして最終作らしい。
今作は二部構成で、前半は在りし日の「ザ・悪徳刑事」大上章吾と、当時最狂
と呼ばれた広島ヤクザを敵に回し暴れ回る愚連隊「呉寅会」沖虎彦との邂逅
が描かれる。後半は大上の後を継いだ日岡が、二課の問題刑事として登場。刑
務所から出た沖虎彦と対峙する、という内容。

相変わらず気合いの入った本格ヤクザ小説。今回はヤクザに真っ向から挑んで
いく愚連隊のヘッドを主人公に据え、任侠道とはまた違った「男の世界」を生
々しい描写で展開。この主人公を一旦刑務所に収監させることで、暴対法施行
それ以前という2つの時代を、ある種対照的に描いているのがポイント。

この種の小説の中では、他よりも圧倒的に深い物語性と、凄まじいリアリティ
を有している。間違い無く傑作だし、とんでもなく面白い。ラストにも「続き」
への惹きを凄く感じるし、やたら期待できるのだが、これが最終作とされてい
るのは、やはりこの後の時代・・・暴対法施行後の世界・・・が、ヤクザ小説として
面白みに欠けるからなのかなぁ・・・。
柚月先生ならなんとかなりそうな気もするんだけど。