死の臓器

#修復腎


▼死の臓器 / 麻野涼(Kindle版)

Kindle Unlimitedのリコメンドに出て来た作品。
麻野涼という作家名に見覚えがあったような気がしたので事前に調べた
ところ、どうやら読書履歴無し。タイトルからして大好物医療ミステ
リーであることは間違いないし、加えて初めての作家。ちょっとドキド
キしながら読み始めた。

ワケアリTVディレクターが、富士樹海のロケで女性の死体を発見。
コレがちょっとしたスクープとなり、人生に明るい兆しが見えてくる。
検死の結果、死体からは腎臓が抜き取られていることが確認されたが、
身元は不明のママ。コレに一念発起したTVディレクターは、死体の身
元についての独自捜査を始める。同じ頃、熊本泌尿器科医は、警察か
ら任意の取り調べを受けることに。容疑は身に覚えの無い「臓器売買」
この2つの事件が、とんでもない事実からリンクして行く・・・という感じ。

これ、なかなかのヒット
臓器移植のチャンスを心待ちにする人工透析患者とその家族の現実が浮
き彫りにされる、という社会派な切り口が功を奏し、そこで葛藤する医
師の心情が痛いほど伝わってくる。さらに、透析を利用して良からぬこ
とを企てる悪の勢力の暗躍もあるので、とにかく緊張感を切らずに楽し
むことが出来た。

ただ、ミステリーおよびハードボイルドの構成処理は、正直稚拙
真相が読めた、ということではなく、「え、それがオチなの?」という
ラストの処理があまりに残念。

もちろん全体的には上質な佳作であると思うし、今後の展開も期待でき
るストーリーなのは間違いない。取り敢えず、続編も読んでみるか・・・。