#台湾プロレス
▼リングサイド / 林育徳(著)、三浦裕子(翻訳)(Kindle版)
以前から気になっていた小説。
林育徳とは台湾の新進作家で、オリジナルは中国語で書かれている。
そして題材は『プロレス』。コレに興味を持つな、という方が難しい。
全10篇から成る連作短編で、共通テーマはもちろんプロレス。だが、
台湾の発展途上都市で暮らすあらゆる年代の【生活】が絡められてい
る所為か、ありきたりなプロレス小説とは立ち位置を完全に異にして
いる感。
かといってプロレスに対する記述が足りていない、という事は絶対に
無い。WWEや新日本といった他国のプロレスのテレビ放送事情や、
ネットでのコミュニティ、そして台湾国内にも幾つか存在するインデ
ィー団体の現状が細かく書いてある。そういう完全にニッチでマニア
ックな素材を、良い意味で【枯れた人間ドラマ】を組み立ててしまう
のだから、この作家のポテンシャルはかなり高いと思う。
読後感はプロレス本のソレではなく、上質なヒューマンストーリー。
・・・もしかしたら、これまで読んだプロレス小説でいちばんの作品か
もしれない。コレは次作に期待。訳者の三浦裕子さん、ぜひ林育徳氏
の新作を日本にも!!