#ヒューマンミステリー
▼汚れた手をそこで拭かない / 芦沢央(Kindle版)

Kindle Unlimitedを徘徊中に発見した、僕にとって久々の芦沢央作品。
5篇からなる短編集であり、第164回(2021年)の直木賞を惜しくも次点で
逃した作品。傑作ミステリーとして評判だったのだが・・・。
・・・なるほど、確かにミステリー。
短編ながらしっかり伏線が貼られ、ソレがキッチリ回収される、というちゃん
としたミステリーなのだが、読後感はヒューマン系のソレ。各篇全てがリアリ
ティ満点のエピソードであり、この作品の中で起こる全ては自分にも起こりう
ること、と余裕で錯覚。自分がそうなってしまった時のシミュレーションまで
初めてしまうのだから凄い。
特にシンクロ率が高かったのが3篇目の「忘却」。
人生の晩年期に差し掛かった老夫婦の物語だが、ここで起こった事件があまり
にも恐ろしい。もし自分がコレをやってしまったら、と考えると、胸が潰れそ
うになるくらい苦しくなるし、耐えられる気がしない。そこまで人の心をコン
トロールした上で、しっかり意外なオチを付けてくる。これはもう、「傑作」
というレベルに達している気がする。
これまでも見事な叙述トリックを楽しませてくれた芦沢央だが、ここでまた
新たな『魅せ方』を持ってくるところが非常にニクい。風変わりなミステリ
ーを探している人がいれば、もう是非に。またハマりそうだな、この作家。
