汚れた手をそこで拭かない

#ヒューマンミステリー


汚れた手をそこで拭かない / 芦沢央(Kindle版)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


Kindle Unlimited
を徘徊中に発見した、僕にとって久々の芦沢央作品。
5篇からなる短編集であり、第164回(2021年)の直木賞を惜しくも次点
逃した作品。傑作ミステリーとして評判だったのだが・・・。

・・・なるほど、確かにミステリー
短編ながらしっかり伏線が貼られ、ソレがキッチリ回収される、というちゃん
としたミステリーなのだが、読後感ヒューマン系のソレ。各篇全てがリアリ
ティ満点のエピソードであり、この作品の中で起こる全ては自分にも起こりう
ること、と余裕で錯覚。自分がそうなってしまった時のシミュレーションまで
初めてしまうのだから凄い。

特にシンクロ率が高かったのが3篇目の「忘却」
人生の晩年期に差し掛かった老夫婦の物語だが、ここで起こった事件があまり
にも恐ろしい。もし自分がコレをやってしまったら、と考えると、胸が潰れそ
うになるくらい苦しくなるし、耐えられる気がしない。そこまで人の心をコン
トロールした上で、しっかり意外なオチを付けてくる。これはもう、「傑作」
というレベルに達している気がする。

これまでも見事な叙述トリックを楽しませてくれた芦沢央だが、ここでまた
新たな『魅せ方』を持ってくるところが非常にニクい風変わりなミステリ
を探している人がいれば、もう是非に。またハマりそうだな、この作家。