天上の飲み物

▼天上の飲み物 / 三浦しをん(Kindle版)

久々のKindle Singleはこれまた久々の三浦しをん作品。
SingleはUnlimitedだとどうやら無料で読めるらしい。有名作家の作品が
そこそこ多いので、今後はキッチリチェックさせていただく(^^;)。

この短編の主役はどうやら“吸血鬼”。それも黄昏れ感満載、それでいて
見た目は20歳前後。何百年も生きた末にある種達観し、自分の生活を人間
に近づけて行く、という変わり種。人の血を吸わなくなった代わりに、高級
なワインをこよなく愛する。吸血鬼なのにもかかわらず、行動様式は完全に
草食系(^^;)。こういう設定をするところが三浦しをんの真骨頂

そんな草食系吸血鬼の、何百度目かの「恋」のお話。
どんなに誰かを好きになっても、その人は必ず自分より先に死ぬ。考えてみ
れば絶望的であまりに悲しい人生を、この短いストーリーで清々しいヒュー
マンストーリーに転化させてしまうのだから流石。

出来ればこの吸血鬼が主役を張る物語を、もっとたくさん読みたい。
単純にそう思った。そして、ちょっとワインが恋しくなる(^^;)。個人的に
の方が好みなんだけど(^^;)。

ツナウォーズ

▼ツナウォーズ / 菅原裕一(Kindle版)

Unlimitedを徘徊してる時に発見した奇妙なタイトルの作品。
菅原裕一という作家はもちろん知らなかった(^^;)のだが、煽り文章に
「東スポ創刊50周年記念特別企画東スポ官能小説大賞グランプリ作家」
いう、あまりに我々を揺さぶる表現が。これは読まなきゃ、ということで
読んでみた。

誤解を恐れずに言うのなら、近未来SF小説w
2回目の東京五輪が終わった202X年、日本政府が「絶滅危機にある、クロ
マグロを始めとする全種類のマグロを完全禁漁にせよ」との全世界からの
要求を受け入れてしまう。これに怒った『世界で一番おとなしい国民』の
日本人暴動を起こす。それも、かなり個人的な闘いを!
・・・それが、タイトルの「ツナウォーズ」である(^^;)。

この作品は、ツナウォーズに参戦した10人の戦士たちの回顧録。
あと、マグロに関する蘊蓄。というか、ほぼ(^^;)。戦士たちは職業も
年齢もバラバラ、さらに言えばマグロの好み(^^;)までバラバラ。ツナ缶
をこよなく愛する女子高生やら、鉄火巻に尋常なる思い入れのあるIT企業
オーナーやら、大トロで憂さを晴らす超高級ソープ嬢やら、もう出てくる
出てくる(^^;)。全般的に爆笑の話なのだが、ちょっといい話クズ話
が非常に良いバランスで散りばめられており、場合によってはホロッとし
たり、下手すれば唸ってしまう場面も。
この作家、結構只者では無い気がする。

ちょっとだけ期待した(^^;)東スポ“官能”小説大賞の部分はほぼ無い(^^;)。
そういうのを期待する人は、アダルトカテゴリで“菅原裕一”を検索すべし。

とにかく・・・。マグロを食べたい、と心から思った(^^;)。
そう思わせただけで大拍手。おもしろいぞ、コレ♪

少女症候群

▼少女症候群 / 根本聡一郎(Kindle版)

根本聡一郎大作戦、早くも(一次)最終回(^^;)。
今のところ氏の著作はこの「少女症候群」を含めて全4作。この作品は氏に
とってある意味特殊。なんとこの本、クラウドファンディングが見事成功し、
紙媒体でも発売! ケルニー氏の表紙のデザインは、紙の本だとさらに映え
る気がする。

しかしホンのちょっとだけ残念なのは、この本が企画モノであること。
デビュー作の「幻覚少女」、ちょっと前にレビューした「脱水少女」と、
書き下ろしの「禁断少女」の3作から成るオムニバス

こうやってタイトルを並べてみるとよく解るのだが、どの作品も「少女」
「症状」に置き換えることが可能。なかなか面白い言葉遊びだけど、
収録中2篇が既読だとちょっと損した気分。ちょっとだけど(^^;)。

ここではとにかく書き下ろしの「禁断少女」について。
若干のホラーテイストを漂わせた異色作だが、それでも独特の透明感を失わ
ないのは見事。少女シリーズの中ではいちばんキツい内容なのだが、おかげ
でラストではかなりの多幸感が味わえると思う。

Kindle系のインディーズ作家を差別するワケでは無いのだが、残念ながら
ハッキリレベルの低い作家が多いのも事実。しかし、時々こういう凄い作家
が普通に居たりするから、発見した時の喜びもひとしお。根本聡一郎、今の
段階で完全にインプット。次作が楽しみ♪

脱水少女

▼脱水少女 / 根本聡一郎(Kindle版)

「Unlimitedに登録されている根本聡一郎作品を全部読むぞ!」大作戦、
昨日よりスタート。

氏の作品はそれほど多いワケでなく、こないだ読んだ「プロパガンダ・
ゲーム」を含め全部で4作品。3年ほど前に「幻覚少女」は読んでおり、
当然残り2作からのチョイス、ということに。まずはこの「脱水少女」
から読み始めてみた。

クリーニング店で働く少女が主人公・・・ではもちろん無く、ファンタジー
とかSFにカテゴライズされる物語。舞台は東北田舎町であり、登場す
るのは等身大の田舎の少年少女達だから、そういうジャンルに落とし込
むのは困難なはずなのだが、読後感は「自然」。ある意味荒唐無稽なス
トーリーをサクッと料理してしまう筆力、単純に凄いと思います、ええ。

そしてこの作家、藤子・F・不二雄・・・というか、ドラえもんの世界に
凄く影響を受けているな、と。読み終わった後に気付いたのだが、その
世界観は名作「のび太の魔界大冒険」に酷似。僕らの年代はそういう価
値観にアレルギーが無いから、物語がスッと入って来るんじゃないかな
ぁ、と感じた次第。

根本聡一郎、非常に良いツボを突いてくる作家。
しばらく注目だな、この人の作品。

文庫X・読了!

「文庫X」読了。
この本の概要については、以前のエントリで述べたのでおおよそを割愛する。

さすがに他の本と同じようにレビューするワケには行かないので、この企画
流儀に則った状態で書かせていただきたく。

まずこの本で明らかになっているのは、“価格810円・ノンフィクション・
500ページ以上”の3点のみ。マスカラスオーバーマスクの如く、通常の
文庫カバーの上にさらに手書きの表紙が被されており、その正体は買った人
のみが解る、というな売り方。

三省堂東京駅店でこの本を購入する前に、ある程度予想してみた。
500ページを超えるノンフィクションでありながら、書店員が太鼓判を押す
ほどの作品を書ける作家、と言うのは、日本にそう何人も居ない。この段階
でちょっとピンと来た。もしかしたら、あの作品なのではないか?と。

2013年6月、某サイトの依頼で書評を書かせていただいた、あまりにも衝撃
的なノンフィクション。仕事で読み始めたにもかかわらず、小説よりも奇怪
で残酷な内容に完全に魅了された。某サイトには僕のレビューの何本かが今
も掲載されているが、入魂具合は随一(^^;)。あの本なら、書店員が推すのも
あり得る、と考えていたのだが・・・。

予想は半分当たった
「文庫X」の著者は、あの衝撃的なノンフィクションを書いた作家と同一
別の作品であったのは幸運であり、あの時感じた衝撃と同様の何かを、今回
も十二分に感じた。なんなら入魂のレビューをすぐにでも書きたいのだけど、
内容に触れるのは企画元である岩手県盛岡市・さわや書店フェザン店に失礼。
12月9日に行われる「文庫X開き」まで、レビューは控えようと思う。

文庫X、すばらしい企画。著者発表会まではまだ間がある。本が好きな人は、
ぜひこの企画に乗って欲しい。エキサイトするよ、きっと。