古惑仔

#ノワール短編


▼古惑仔 / 馳星周(Kindle版)

Kindle Unlimitedでまだ読んでいなかった馳星周作品。
特に何も考えずにチョイスしたのだが、なんとこれが氏には珍しい短編集。
ちょっと面食らいましたよ、ええ。

改めて。
全6篇からなる短編集。主役の殆どは日本で暮らすワケアリのアジア系外
国人かその関係者で、おおよそは違法滞在の中国人。野心を持って来日し
たにも関わらず、敢えなく夢は破れ、最悪の状況に陥る人たちの様子が、
バリエーション豊かに描かれている。

「不夜城」に代表される馳ノワールであることは間違い無いが、登場人物
のレベルが明らかに低い。他の作品に登場する中華系マフィアたちはある
意味で恐怖の象徴であったが、今作に出てくる人たちは全員がそこまで行
かない普通(?)の違法滞在者。もちろん馳作品だから、むごくてエグい
場面の多々ある物語なのだが、主軸は間違い無く【悲哀】。こういう方法
で描かれるノワールの方が、もしかしたらリアルなのかもしれない。

タイトルの「古惑仔」には、「チンピラ」というサブタイトルが付いてい
るのだが、正直この作品の登場人物たちは皆チンピラ以下の最下層な気が
する。彼らの様を読んで僕がいたたまれなくなるのは、同じく自分がチン
ピラ以下だからなのかなぁ・・・。ちょっと複雑。

白鳥とコウモリ

#ザ・ミステリー


▼白鳥とコウモリ / 東野圭吾

東野圭吾の新作。
コロナ禍の影響か、遂に過去作品の一部が電子書籍化された東野作品だが、
新作はやはりソフトカバーオンリー。まずは書店でその束を見て度肝を抜
かれた。「白夜行」までいかないかもしれないが、一見しただけで大長編
と解る装丁。気合いを入れて読み始めた。

弁護士の変死から始まる物語。手がかりの殆ど無い事件で、捜査は暗礁に
乗り上げるかと思われたが、ある容疑者の自白で事態は急展開。被害者・
加害者双方の家族も生活が一変し、世間の好奇の目に晒されてしまうのだ
が、被害者の息子と加害者の娘の双方が、犯人の「供述」に全く納得が出
来ないでいた・・・という感じ。

・・・凄い。
全編に張り巡らされた伏線と、あまりにリアルな加害者・被害者の感情が
交錯し、結果全てから目が離せない。とんでもない長編なハズなのに、全
くと言って良い程長さを感じず、ほぼ2日で全てを読み切ってしまった。

東野圭吾の著作はほぼ全てを読んでいるのだが、個人的にその中でもベス
ト3に入る傑作、と評価。どこを読んでも静かな緊迫感が溢れ、読中心臓
の鼓動が安定しない程。そしてこれまた久しぶりに、最後まで犯人が全く
解らない、というミステリーの王道もしっかり歩んでいる。

これぞザ・ミステリー。東野圭吾の真骨頂を、久々に堪能させてもらった。
ちなみに読後感、悪く無いどころか清涼感すら。オススメすることに何の
躊躇も無い。改めて、凄い作品です、コレ。

門茂男のザ・プロレス ≪角川抜粋版≫

#元祖暴露本


こないだ仕入れた例の稀覯本、文庫の3冊を一気に読んだ。

『門茂男のザ・プロレス』シリーズの3冊で、タイトルはそれぞれ「力道山の
真実」、「馬場・猪木の真実」、「群狼たちの真実」。著者の門茂男とは、
力道山時代に東スポでプロレス担当記者として活躍し、力道山没後は日本プロ
レスコミッションで長い間事務局長を務めたバリバリのインサイダー。

佐山サトルの「ケーフェイ」やミスター高橋の「流血の魔術」以前に書かれた
プロレス内幕暴露系の元祖で、オリジナルは「門茂男のザ・プロレス365」と
いう8冊の単行本。この角川文庫版は、そこからの抜粋である。

ここまで長い間プロレスを観ているから、仮に暴露本を読んでも今さら何も感
じない僕だが、多感な頃に365を読んだ時、そりゃあもうアタマに来た(^^;)。
小学校高学年くらいで『暗黙の了解』という概念(^^;)が染みついていた僕だ
が、これが「本」として流通している、という事実が気に食わず、完全黙殺し
ていた少年期(^^;)。熱かったなぁ、あの頃は。

今読み返すと、暴露の部分も後にいくらでも出てくる他の作品に比べれば全く
大したことは無い。逆に【日本プロレス】という会社の経営に纏わる真実の部
分は今でも興味深く読める。こりゃ大人になった、ということでいいのかな?

この抜粋版も絶版であり、今では入手困難。
もし叶うのであれば、オリジナルの365全巻をもう一度しっかり読みたい。
復刊ドットコムあたりでなんとかしてくれないかなぁ・・・。

ドキュメント

#文化系部活動


▼ドキュメント / 湊かなえ

湊かなえ、待望の新作は名作『ブロードキャスト』の続編。
交通事故で陸上選手としての夢を絶たれ、やむなく放送部に所属した男子
高校生が、放送コンテスト「Jコン」で全国制覇を目指す物語。前作は
優勝にあと一歩及ばず、翌年のリベンジを誓うところで終わっていた。
今作は主人公と放送部の面々の、その後の物語である。

かつて“イヤミスの女王”と言われた湊かなえだが、最近はイヤミスを殆ど
頼りにしていない作品が多い。もちろん僕もイヤミスで湊かなえに入った
ので、最初は違和感があったのだが、脱イヤミス作品もなかなかに面白か
った、というのが湊かなえの凄いところ。その中でもいちばん共感したの
が3年前にリリースされた『ブロードキャスト』という青春モノであり、
個人的にはずっと続編を待っていた。

今回は最先端の文化系部活動の物語だと思っていたのだが、かなりレベル
の高い学園ミステリーに変貌。思春期の少年少女の心模様を描きながら、
ある日起こった事件の犯人を炙り出す、という構成。悔しいことに、僕は
最後まで犯人が解らなかった。いや、解らなかったというよりも、誰一人
犯人であって欲しく無い、という先入観を植え付けられた結果な気がする。

ということで、読み応え抜群の青春群像ミステリーであることは保証する。
誰が読んでも絶対に熱くなれる、とは思うのだけど、この単行本の為に書
き下ろされた「終章」があまりに切ない。不覚にも、ちょっと涙が出た。

・・・おそらく今後はこういうスタイルの小説が増えていく気がする。
この作品に関しては、今の騒動が【過去】になった時にもう一度読みたい。
せっかくの傑作なのだから。

Mil Máscaras

#50th Anniversary


『仮面貴族』、ミル・マスカラスの初来日から、今年で50年が経過する。
これを記念し、Gスピリッツが大々的なマスカラス特集。本人への最新イン
タビューの他、弟のドス・カラスのインタビュー、獲得メジャータイトル
の解説など、非常に興味深い内容となっているのだが・・・。

最近発掘されたゴング・ポケットダイジェスト③マスカラス特集と並べてみた。
マスカラスが日本で大人気になったのは、本人が来日する前から毎月のよう
にプッシュした月刊ゴングのおかけ、というのはほぼ全てのプロレスファン
が知っている事実。「ゴングのマスカラスか、マスカラスのゴングか」とい
うキャッチフレーズまであった。

Gスピリッツの編集チーム首脳陣はみなが元ゴング編集者。そういう意味で
マスカラスの特集本が出るのは頷けるのだが、その前に大きな奇跡に感謝
しなければなるまい。

ミル・マスカラスが、未だに存命であり、元気で過ごしていること。
更に凄いのは、ミル・マスカラスが未だ現役のプロレスラーであること。
マスカラスももう78歳(!)。こうなったら僕が死ぬまで生きてて欲しい。

「千の顔を持つ男」が「百の年を重ねた男」になったらカッコイイじゃん♪

▼G SPIRITS No.59