こうふく みどりの

#道


▼こうふく みどりの / 西加奈子

先日「G SPIRITS SPECIAL EDITION vol.1 アントニオ猪木」を入手。
10年前のMOOKで、これについては改めてちゃんと書きたいのだが、その中
に今や直木賞作家となった西加奈子インタビューが掲載されていた。
西加奈子がプロレス好き、というのは周知の事実なのだけど、何故に世代の
全く違う猪木のMOOKに彼女が・・・?

・・・インタビューを読み込み、その後すぐに2冊の本を注文。そのうちの1冊
がこちらの作品となる。

大阪の下町を舞台としたヒューマンドラマ
裕福では無いが、何故だか近所の人が集まりがちな家に住む中学生女子が主
人公。祖母・母・叔母・イトコに加え、2匹の猫、1匹の犬までが女性という
少しだけ特殊な家族と暮らす主人公のそばに、背の高い転校生男子が現れて
・・・という内容。

メインは主人公の日常とその心情描写なのだが、章の合間に異なった語り部
による独白が挿入される、という構成。タイムラインがはっきりせず、普通
ならとっちらかって解りにくい内容になってしまうのが常なのだが、幾つか
のキーワード統一感を保っているのは見事。もちろん、何の関連性も見え
ない話はラストでキッチリ繋がる。

僕は「大阪弁の表記」が苦手で、以前に読んだ他の西加奈子作品でもちょっ
としたアレルギーを感じたのだが、この作品はすんなりと入ってきたどころ
か、ちょっとした心地よさすら感じた。不思議な世界観を有する唯一無二の
作品、とまで思う。

そして、アントニオ猪木という存在が非常に重要。何故に今までこの作品を
知らなかったのか、と自分を責めた(^^;)くらい。

この1冊だけでもかなりの完成度なのだが、【こうふく】2冊で1作品、と
いうことらしい。このまま『こうふく あかの』を読むつもりである。

大泉洋のホラ話③&②

#雪面の飛び魚


▼水曜どうでしょう ~大泉洋のホラ話~ ③ / 大泉洋・星野倖一郎

週刊少年チャンピオンで連載されていた(らしい)マニアックマンガの金字塔
『大泉洋のホラ話』3巻がリリースされた。

1巻の時に、「1巻があるということは2巻もある」と書いたが、普通に3巻ま
で出てるのだから呆れるやら驚くやら(^^;)。そして、DVDの特典映像にしか
なっていない【ひぐまの洋】を、しっかり劇画にするという楽しすぎる悪ノリ
・・・にも関わらず、作者編集者にやたら共感してしまうのだから、僕もかな
りのバカだと思う。

さすがにコレで打ち止め・・・だと思うのだけど(^^;)。
取り敢えずマンガになっていないホラ話なんて、もう無い気がするので。

↓↓もちろん2巻も出てるよん♪

▼水曜どうでしょう ~大泉洋のホラ話~ ② / 大泉洋・星野倖一郎

OMNIBUS

#ストロベリーナイト


▼オムニバス 警部補 姫川玲子 / 誉田哲也(Kindle版)

約4年ぶりとなる誉田哲也ストロベリーナイトシリーズの新作。
体裁は連作短編であり、幾つかの章の語り部を「現在の姫川班メンバー」が
それぞれ担当しているのがポイント。タイトルの意味としてピンとくる構成。

惜しむらくは、全7章のうち3章分が過去にKindle Singleとしてリリースされ
ている、ということ。シリーズ初作からずっとストロベリーナイターズだっ
た僕は当然その3作品は既読であり、正直若干食い足りなかった感はあった。

しかし、各ストーリーのトリックや構成は秀逸で、その辺りのテクニックは
さすが。他作品に比べればけして事件は大きくないし、派手さやグロさも殆
ど感じないのだが、姫川班というチームの実態が垣間見られる。個人的には、
こういうのもたまにはアリ。おそらく次作は長編になると思うのだが、それ
に向かって良いアイドリングになる作品だと思う。

そして!
ちょっとネタバレ注意なのだが、ラストで今後の展開が楽しみにならざるを
得ない描写が。もう一人のスター女性警察官が、姫川玲子の部下として復活
する模様。対極とも言える二人が、どんな二人三脚を魅せてくれるか、今か
ら本当に楽しみ。お願いだから今年中に出して欲しいなぁ、新作

お電話かわりました名探偵です

#変則安楽椅子探偵


▼お電話かわりました名探偵です / 佐藤青南(Kindle版)

お久しぶりの佐藤青南作品。
非常に印象深い日本語のタイトルで、ここから想像できる通りの内容だが、
一捻りがあるところが非常に佐藤青南らしい。

いわゆる【安楽椅子探偵モノ】なのだが、登場するのは普通に警察官(^^;)。
ただし、通信指令センターという110番通報に対応する部署の警察官である。
この部署には一般からの通報内容のみで事件を解決してしまう凄腕のオペレ
ーターが。その異名『万里眼』

・・・というすばらしい設定
まぁ、お決まりと言えばお決まりなのだが、万里眼は幼さの残るカワイイ
系の女性で、語り部はその部下である冴えない男性警官(ただしイケボ)。
超有能な上司に対し、始終あたふたする様が非常にコミカルな上に、その
慌てっぷりでしっかりミスリードを誘っているところがポイント。

ミステリーとしてもかなりしっかりしており、ハードなマニアもきっと満
足出来ると思う。だからこそ、取って付けたような恋愛要素が正直ジャマ
だった。その辺りの真相は、是非続編で明らかにしてもらいたい。

まぁとにかく、かなりオススメ出来る良作。
この作家、個人的にかなり評価してますよ、本当に。

マンガ万歳

#唯一無二


▼マンガ万歳 画業50年への軌跡 / 矢口高雄

昨年他界されたマンガ家・矢口高雄氏の追悼書籍
秋田魁新報で連載されていた「シリーズ時代を語る」をまとめたものだが、
テイストはエッセイ。どうやら矢口先生が逝く直前まで、ご本人を含めた
編纂が行われていた模様。

幼少期や青年期の思い出話はもちろん、を患い72歳創作活動を停止
た時期のことまでがしっかりと描かれている。文章量はけして多く無いが、
エピソードのチョイスに過不足を一切感じない。

圧巻なのは表紙と巻頭のカラーグラフ
表紙の「鮎の群れの中で微笑む三平」というあまりにも有名なデザインは
もちろん、マンガという枠で括ることすら躊躇してしまうあまりに美しい
原画の数々は永久保存版。これ一冊で「美術作品」としての価値がある。

つくづく残念なのは、釣りキチ三平「天沼の鱗剥ぎ」が世に出ず、幻の作
品となってしまったこと。この本にはその原画の一部と、ストーリーが記
されているのだが、それがあまりに魅力的。もし先生に悔いがあるとすれ
ば、この作品を完成させることが出来なかったこと、だと思う。

鱗剥ぎに関しては完成版をあちらで読みたい。どうかあちらでも、精力的
唯一無二「矢口高雄マンガ」を描き続けてください・・・。