鎮魂歌

#歌舞伎町ウルトラアンダーグラウンド


▼鎮魂歌 不夜城II / 馳星周(Kindle版)

馳星周強化月間継続中。
衝撃のデビュー作「不夜城」に続いて読んだのは、もちろん「不夜城II」という
サブタイの続編。メインタイトルは「鎮魂歌(レクイエム)」

前作で語り部と主役を務めた日台ハーフの劉健一の今回の立ち位置はフィクサー
自分を追い詰めた楊偉民を始めとする歌舞伎町の中国系マフィアに対し、虎視眈々
復讐の機会を窺う役どころである。

コレに変わり、語り部を務めるのは2人
1人は楊偉民の飼い慣らす台湾の殺し屋郭秋生、もう1人は落ちぶれて北京マフィ
アの手下に成り下がった元刑事滝沢誠。全く立場の違う2人が、180度違う視点
で物語を構築。そのため、同一シーンの重複・・・双方の視点を描く・・・が見られる、
という面白い構成。

前作よりも間違いなくハードグロテスク、そしてエロティック
性描写のシーンは吐き気がするほど生々しく汚らわしいし、殺人や拷問の方法も
前作に輪を掛けた残酷さ。これに加え、前作ではやや稀薄だった「同性愛」の要
素が入ってくるのだから、さすがにハートの弱い人にはオススメできない(^^;)。

もちろんこの作品はフィクション。歌舞伎町には楽しいところが山ほどある、と
いうことは昔からよく知っているし、今のところ中国系マフィアの銃撃戦を目撃
した記憶も無い。にも関わらず、今は歌舞伎町に近づきたくない、と僕に思わせ
ちゃっているのが、この作品の凄いところだと思う。

ここまで来たら、完結編を読まないわけにはいかない。
毒を食らわば皿まで、ということで!

不夜城

#歌舞伎町ウルトラアンダーグラウンド


▼不夜城 / 馳星周(Kindle版)

馳星周強化月間、犬関係を少しお休み。
氏のルーツを探ろう、ということで、デビュー作にしてアングラの傑作、と誉
れ高い「不夜城」をチョイス。いや〜・・・。

舞台は新宿歌舞伎町、登場するのは殆どが中国系マフィア。それも台湾・上海
・北京・香港と、各地の猛者が登場し、それぞれが歌舞伎町の縄張りを巡って
暗躍詐欺・恐喝はもちろん、殺人まで普通に起こるから、本当なら日本での
物語、というのに無理がある(^^;)。が、それが歌舞伎町だとやたらリアルに感
じてしまうのだから不思議。

そして彼らに翻弄されながらもしぶとく立ち回る主役日本・台湾ハーフ
故買屋・健一凄まじいバイタリティに思わず驚愕。彼に限らず、登場人物は
強烈なキャラであり、相関図を想像するだけでおもしろい。

ただ、物語はドの付くアンダーグラウンドな上に、エログロとしか表現出来な
どぎつい描写も多々。誉田哲也ジウシリーズや歌舞伎町セブンシリーズで
慣れている筈の僕でも相当おののいたので、読む人はそれなりの覚悟を!

・・・現在、続編にチャレンジ中。さらにヤバイぞ、次は。

陽だまりの天使たち

#魂友


▼陽だまりの天使たち ソウルメイトII / 馳星周(Kindle版)

こないだあっという間に読破した馳星周ソウルメイト」の続編
前作同様の短編集であり、巻末の書き下ろしショートストーリーを含めると
全7篇の構成。ほぼ連続して読んでいるため、僕の中である程度の内容は保証
されていたのだが・・・。

・・・この作品、通勤途中とか仕事の休憩中など、人目のあるところでは絶対
に読まない方がいい。2作目のソウルメイトは前作で顕著だった投げっぱな
し感の一切が消え、全篇で「人間と犬」の特別な繋がりが切ないまでに描写
されている。

特に、愛犬との切なすぎる別離れを描いた「フラットコーテッド・レトリー
バー」は号泣どころの騒ぎではなく、1ページ読む度に涙をこらえる作業を
余儀なくされる始末。この本でも再び、大好きだったあの子らのことを思い
出し、同時にどうしようもない後悔に苛まれた。

他の誰がどう思うが一向に構わない。僕は犬に対してこれだけ凄まじい愛情
を表現出来る馳星周という作家が大好きだ。全作読破するだろうな、きっと。

ソウルメイト

#魂友


▼ソウルメイト / 馳星周(Kindle版)

やっぱり始まってしまった馳星周強化月間。
「少年と犬」の後に諸々調べてみたところ、氏には「犬」を扱った作品が
多々あるとか。取り敢えず、出版年月がいちばん古いこの作品を選んでみた。

全7篇から成る短編集
サブタイトルは全て犬種で、7種類の犬の飼い主の物語が描かれている。

どれも印象的なエピソードなのだが、いわゆる「オチ」存在しないタイプ
考えてみれば「少年」も同じような構成だが、あちらは連作短編であるが故
に、篇ごとの結末がある程度見えていた。しかし、こちらの作品はラストの
投げっぱなし具合が凄まじく、「その後」に対する想像が広がりすぎる感が。
もうちょっとだけ手厚さが欲しかった気がする。

ただ!
7篇のうちのラスト1篇に関してはその限りに非ず。ある意味でバッドエンド
なのだが、人間と犬の間でしか成立させることの出来ない友情のカタチが、
壮絶なまでに描写されている。従って今回も最後は号泣。涙を流した量は、
もしかしたら「少年」の時より多かったかもしれない。

僕はずっと犬や猫が大好きなのだけど、彼らとソウルメイトとなる権利を随
分昔に失っている。でも、もし許されるのなら人生が終わりを迎えるまでに
もう一度だけ、ソウルメイトに巡り会いたい・・・と思った。

・・・もちろん、次は続編。今度はどれだけ泣くのかな?

ヒポクラテスの試練

#パンデミック


▼ヒポクラテスの試練 / 中山七里(Kindle版)

約4年ぶりのリリースとなる、中山七里・ヒポクラテスシリーズ新刊
メインキャストの一人である刑事・古手川和也の登場する作品は多々読んで
来たのだが、このシリーズの主役にして中山作品でいちばん魅力的だと思わ
れる女性法医学者・栂野真琴の登場は久しぶり。

相変わらず気合いの入った医療ミステリーであり、多々ある「法医学」とい
うジャンルを扱った作品としては、おそらく国内最高峰。解剖シーンのリア
ルさと、遮二無二頑張る古手川&栂野の名コンビの姿がすばらしいコントラ
ストを描く、という構成は、この新作でも全く変わらなかったのが嬉しい。

前作までは連作短編だったのだが、今作は遂に長編。そして凄いのが、扱わ
れている内容が「パンデミック」であるということ。正に今、現実に起こっ
ているコロナというパンデミックの最中に、こういう内容の作品を世に出せ
る作家は「強運」と呼ぶ他無い。

・・・これは今すぐドラマにすべき。
パンデミックの何が恐ろしいのか、今一度再確認できる筈。きっとリアルな
パンデミック対策にもなる筈なので・・・。