アンソロジーで何本かを読んでいた近藤史恵の作品。
小気味の良い短編が印象的だったので、迷わず短編集を選択してみた。
独特のテイストで描かれるヒューマンミステリーが8篇。
ちょっとホロっと来る話、ある種超常現象な話、気味の悪い話、ほろ苦い
恋の話など、内容は多岐に及ぶ。それぞれ全く別なエピソードなのに、
文体に一本筋が通っているためか、連作短編のような雰囲気。おかげで、
最後まで緊張を切らすこと無く読み切れた。
印象に残ったのは、やっぱりタイトルロールの「ダークルーム」。
写真家の卵たちのエピソードであり、意味は「暗室」。タイトルと内容が
しっかりリンクした良作で、独特の清涼感すら感じる。
そして何より感心したのは、全てのエピソードに於いて、(おそらく)
意図的に最後の最後までの書き込みを避けていること。こないだ読んだ
短編集で感じた「もうちょっと書き込んで欲しい」、という感想は全く
感じず、「その後」を想像するのが凄く楽しい。「引き算」で作品世界
を創れる作家さんって、普通に凄いと思う。
こうなったら長編にもチャレンジするか・・・。
Kindle版がいっぱい出ている作家さんなので、いくらでも選べそうだし。