我が教祖にしてイヤミスの女王、真梨幸子サマの短編集。
ところが幸子サマが文庫新刊を出した、というのにもかかわらず、Amazonの
レビュー欄にそれらしくない評価(星の数)が多々見える。どういうことだ!
と憤りつつ内容を確認してみると・・・。
煽り文句として「著者初の短篇集」とあるのだが、どうやらこれが虚偽(^^;)。
全6篇のうち、半分の3作品が連作短編である「プライベートフィクション」に
収録されていたもの。そりゃあまぁ、怒る人も居るよな、とは思ったのだが。
「プライベートフィクション」は2012年に発売された新書。いわば幸子サマ
が教祖の位置に上がる前の“層雲期”に当たる作品であり、コレを読んでいるの
は間違いなく僕と同じく真梨幸子作品を全読破している人としか思えない(^^;)。
評価は辛辣だが、ある意味この状況は勲章なのかもしれない。
ただ、出版社(もしくはこの本の広報・宣伝担当者)には猛省を促す。つまら
ない嘘をつかなければ、この状況は生まれなかったと思うよ、マジで。
ということで、僕は初出の3篇を目当てに購入。解っていれば全く問題無いん
だけどなぁ・・・。
さて、ここからがレビュー(^^;)。
収録作品タイトルは「一九九九年の同窓会」「いつまでも、仲良く。」「シー
クレットロマンス」「初恋」「小田原市ランタン町の惨劇」「ネイルアート」。
このうち、1999・いつまでも・小田原の3篇が既出で、他の3篇は初めて読む
作品。どれも相変わらずものすごい悪意に満ちているのだが、少し古い時代、
インターネット黎明期のシステムとコンテンツを題材にしたラスト「ネイルア
ート」には、久々に震撼した。身体中がムズムズする程の恐ろしい描写は、
真梨幸子にしか出来ない芸当。この後味の悪さ、本当に癖になる(^^;)。
734円で新しい短編が3つも読めるのであれば、下手すればお買い得(^^;)かも。
そして久々に読み返した「1999」は、ジワッとした恐ろしさが最後に真っ逆さ
まに落ちる。今をときめくイヤミスの女王の原型とも言える良(?)作。
そしてこの作品、我々の永遠の課題である「ファンタゴールデンアップル問題」
を大胆に採り上げているところもポイント。
正直、イヤミスおよび真梨幸子初心者には超オススメの短編集!
個人的には、新規の3作品が読めただけで大満足です。そしてまもなく新作が!
そちらも楽しみに待っておりますよ、幸子サマ!