クロノスタシス

▼水鏡推理6 クロノスタシス / 松岡圭祐(Kindle版)

水鏡瑞希シリーズ第六弾
まず驚くのは、今回も前作からのスパンが2ヶ月しか空いていないこと。
このペースでリリースされたら今年中に余裕で10巻を超えることになる。
すげぇな、松岡圭祐(^^;)。

前作で「研究公正推進室」という短めの名称の部署(^^;)に異動と相成った
主人公・水鏡瑞希さんが今回ターゲットにするのはなんと「過労死」

過労死過労が原因の自殺を未然に防ぐため、過労のリスクを数値化して予防
できる、という最新技術が研究公正推進室に提出された。総合職・官僚の須藤
と共に最終評価報告書の作成を任された水鏡は、自殺した財務省の若手官僚
まつわる実例を徹底的に探ろうとする。ところがいろいろなところから圧力が
かかってしまい・・・という内容。

水鏡推理は1から6まで全てを読んできたが、今回のエピソーはこれまででいち
ばん解りやすい。過労死は一般的な日本人にとって非常に身近なテーマであり、
誰にでもそうなる可能性がある。今作では専門用語殆ど出てこないのだが、
このテーマにはきっと必要が無かったのだと思う。小難しい技術を解った気に
なれる、というのがこの作品の魅力の一つだったのは間違いないが、それを補
ってあまりある緊迫感に包まれた意欲作。そして問題作でもある。

僕らのわりと近くで実際に起こった「過労が原因の自殺」は、今も騒動が収ま
らないまま。アレに関しては本当は言いたいことが山のようにあるのだが、
少なくともこの作品に登場する技術が稼働していれば、防げたことなのかもし
れない。フィクションなのが本当に残念

意外すぎ絶句する程のラスト、それでも強引では無い腑に落ちる展開は、単
なるミステリー作品として読んでもかなりの水準。シリーズ最高傑作、で良い
と思います。

手が早く、いつでも量産体制なのにもかかわらず、「質」が絶対おろそかにな
っていない松岡圭祐を心からリスペクト。でも、休めるときは休んでください
今後松岡作品が読めなくなっちゃったら大ごとなので。