誉田哲也の新作。
この作家は非常に振り幅が広く、警察ミステリーから剣道モノ、音楽モノ、更
にはほのぼのお仕事モノなど、いろんなジャンルの作品を描いており、驚くこ
とに基本殆どハズレの無い天才。そういう人が今回手を付けたのは・・・。
最初の3章くらいまで、正直意味が解らなかった。
毛色が全く違うエピソードが次々に繰り出され、果たして同じ作品世界なのか?
と疑問に思った程。いや、下手すれば落丁本を買っちゃった、とすら思った(^^;)。
まぁ、電子書籍だからそれはあり得ないのだけど(^^;)。
具体的に言えばストーリーは4つ、共通点はほぼ「女性」が主人公ということ。
・ミステリー小説家志望の友だちが出来た基本フツーな女子高生
・格闘家の父と事故で失明した妹を持つ姉
・音楽家の夢が破れ、才能ある妹に嘲まれつつ実家の喫茶店を手伝う姉
・病弱で外出すらままならない人(後の方まで性別不明)
・・・の4名のエピソードを軸に物語は展開する。
誉田哲也ファンならすぐピンと来ると思うが、この中にこれまでの誉田哲也の
ほぼ全てのジャンル、すなわち警察・格闘技・音楽・ヒューマンが組み込まれ
ているのがポイント。この「全く別」と思われるエピソードが、クライマック
ス近辺で予想出来ない状況でリンクしてくるから凄い。
こういうの、やりたかったんだろうなぁ、きっと。
とにかく今回は際だった構成力が勝因。全部入りにした弊害か、それぞれのエ
ピソードがやや軽い感はあるが、これから誉田哲也を読もう、という人には格
好のプレゼンテーション作品になりそう。オススメです、かなり。