#本当に効果的なコラボレーションの見本
伊坂幸太郎の新作。
タイトル「クジラアタマの王様」とは、ペリカンの仲間である巨大な薄黒い鳥、
ハシビロコウのラテン語での名称を和訳したモノ。当然、物語のモチーフはこ
の悪党面をした鳥。まさかあの鳥から、こんな物語が生まれるとは・・・。
伊坂フリークを自認する僕だが、この作品は本当に語るべきことが山ほどある。
いつものシニカルでカッコイイ言い回し、けっして斬新では無いのに独創的な
アイデアを加えることで全く新しいモノに思えてしまう設定、魅力的なキャラ
クターなど、伊坂幸太郎の「全て」が詰まっていることを前提とした上で、遂
に恐ろしい手法を実践に移してきた。
重要なのは、普通の書籍で言うところの「挿絵」。
いや、僕の感覚ではもう「サイレントマンガ」とも言える、効果絶大なイラス
トページが、場面の合間ごとに堂々と展開されていること。これまでも小説と
マンガのミックスなどは幾らでもあったのだが、文章→絵→文章→絵と続いて
行くストーリーはどちらが欠けても成立しない。本当に効果のあるコラボレー
ションとは、こういう作品のことを言う気がする。
だから、この作品に関しては絶対に紙の本を買った方が良い、と断言。このと
んでもなく説得力に溢れるストーリーの神髄は、「紙」でなければ体感出来な
い、と言い切ってしまおう。
こちらでは殆どマンガのレビューを書かない僕は、小説愛好家だと思われてい
ると思うのだが、実は出版物の中で「最強」と思っているのはマンガ。その考
え方を、一部改めなければならない、とすら感じてしまった。
読了してからもう数日が経過しているのだが、久々に興奮が抜けない。
あれ以来、闘いこそしないものの、誰かが何か恐ろしいモノと闘っている場面
を実況しているような夢まで見てしまう始末。
いやぁ、本当にまいりました! 文句無く、傑作。
僕の中ではこれまで読んだ伊坂幸太郎作品の中で3本の指に入る。
今年のNo.1だな、いまのところ。