#螺旋プロジェクト
螺旋プロジェクト第三弾の2作目は社会派ミステリーの重鎮、薬丸岳が
登場。この作家凄く読んだ気がしてた人なのだが、なんと初であること
が発覚。未だに信じられない感じ(^^;)なのだけど。
時代は明治、それも幕末をやや引き摺っている頃の話で、場所は瀬戸内
・鬼仙島。これまでの作品で何度か名称の登場した“あの島”が舞台とな
っている。主役になるのは期せずして海賊になってしまった男と、これ
また何故か帝国海軍に所属してしまった男の2人。もちろん、一方は海
の者で、もう一方が山の者、という設定である。
特徴的なのは、海山双方の主役が共に「巻き込まれた」キャラである、
ということ。それぞれが全く違う方向から「人間としての正しい生き方」
を模索し、結果的に似たような場所に辿り着く、という皮肉。正直イマ
イチ行動に思い入れの持てないヒロインとか、終盤のまどろっこしい場
面などの難点はあるのだが、トータルで骨太な印象を残しているのはさ
すが。
これまで読んだ螺旋プロジェクトとちょっと違うのは、宿命的にお互い
を嫌悪する、即ち水と油である筈の海族と山族が、ある種融和する場面
があること。コレ、このプロジェクトのルール的に反則な気がするのだ
が、この後の他作家に影響が出ないかちょっと心配・・・。