虚の王

#渋谷ノワール


▼虚の王 / 馳星周(Kindle版)

読むべき本がまもなくリリース、というタイミングで、繋ぎとしてチョイ
スしたのは定番・馳星周作品。これまで読んだ多くの馳作品と同様、善人
が一人も出てこないザ・ノワール

舞台は渋谷。主人公はかつて伝説のチーマーとして渋谷に君臨しながら、
現在は末端のヤクザでシャブの売人に身を落とした男。渋谷で高校生の集
団が売春を組織化していることに気付き、コレを乗っ取ろうとするのだが、
そこには得体の知れないリーダーが居て・・・という内容。

いわゆるネオ・ブランク・ジェネレーション世代の恐ろしさを描くのが狙
いなのだと思う。渋谷を根城にしている連中は昔からヤバいヤツが多かっ
たが、その「ヤバさ」極限まで誇張した内容。自分さえ良ければ平気で
仲間を裏切り、なんならカンタンに人を殺すのに、心にダメージを一切受
けない、という、完全なるサイコパスが登場してくるのが凄い。

例えば代表作の「不夜城」にも恐ろしい連中が多々登場するが、彼らは確
実に【理由】があって悪に染まっていた。しかし、この作品の「暗」を担
っているキャラには明確な理由がほぼ見えない。それ故に、底の知れない
恐ろしさが溢れ、連続して読むことが出来なかった。

馳作品の読後感の悪さは定評があるが、コレは更に一段階上の極悪作品
こういうのが大好物の僕でもちょっと引いたので、さすがに万人にオスス
メというワケには行かないかなぁ・・・。