伝説のパッチギ王

#原爆頭突き


▼自伝大木金太郎 伝説のパッチギ王 / 大木金太郎(著)太刀川正樹(訳)

大木金太郎に関する書籍、2冊目は大木自身の筆による自伝。
韓国日刊スポーツという新聞で連載されていた記事をまとめたモノで、
その日本語訳がコチラ。韓国版を見ていないのでなんとも言えないが、
おそらく装丁などは日本オリジナルだと思われる。

誤解を恐れずに書くのなら、この作品には【間違い】が多々ある。
例えば、力道山没時に奪取した、とされるWWA世界タッグタイトルに関
しては、まだ世界王座になる前のUSタッグ選手権であるし、米国で当時
NWA王者のルー・テーズに善戦の上惜敗した、というのも嘘。実際には
テーズにボコボコにされてレフェリーストップとなった、というのが本
当のところらしい。

その他の試合記録や時系列もかなりあやふやだし、師匠の力道山を必要
以上に美化されていたりするのだが、韓国での大木の立場を考えると、
話に多少の尾ひれが付くのもしょうがないかと。全盛期の大木は正に
「韓国の力道山」であり、国民的英雄。その頃の大木を知る韓国のオー
ルドファンに、やや血生臭い真実を無理に知らせる必要は無い気がする。

ただ、『キム・イル 大木金太郎』というイチプロレスラーの自伝で、
第二次大戦後の韓国の歩みが、ある程度把握できてしまうのは凄いこと。
少なくとも僕の中の大木金太郎は、アントニオ猪木とプロレス史に残る
死闘を展開してくれた名選手であり、その事実に対するリスペクトは、
今後一生消えない。

しかし、大木の他にはストロングマシン2号の力抜山くらしか知ってい
る選手が居ないのに、黎明期の韓国プロレス史は本当に興味深い。
取り敢えず予習は完璧。今後続いていく昭和プロレスマガジンの連載記
事、心の底から楽しめそう。