ミカエルの鼓動

#漢


▼ミカエルの鼓動 / 柚月裕子(Kindle版)

柚月裕子の新作。
おそらくデビュー作「臨床心理」以来の医療モノなのだが、これが・・・。

医療ミステリーと言えばその通りなのだが、内容は気合いの入ったハー
ドボイルドで、ゴツゴツとした人間ドラマ。こういうのは多少ハートフ
ルな要素が入るのが常套手段であり、そういうところで肩の力を抜ける
のだが、さすがは柚月裕子、「遊び」一切入れていないところが凄い。

さらに、医療モノと言ってもかなり専門性に寄った内容。普段なら間違
っても意識しない病気・術式のオンパレードで、普通の作家なら退屈を
覚えても仕方無いのだが、まぁとにかく「読ませる」さぁ、付いて来
てみろよ、と挑発されているかのような文章は、氏の真骨頂だと思う。

そして相変わらずの漢臭さ(^^;)。
こういうテイストの作品だけを書いているワケでは無いのは知っている
が、医療分野でも「孤狼の血」シリーズと同等の、とんでもないレベル
迫力が伝わってくる。コレを女性が書いている、というのを俄に信じ
ることが出来ない。

あまりのハードさで読むのが辛い人は居ると思うが、それでも絶対に最
後まで読むべき。柚月裕子の凄まじさを堪能して欲しい。