#Taking Bump
▼王道ブルース / 渕正信(Kindle版)
2025年現在、71歳の今も現役としてリングに上がり続けるいぶし銀のプロレス
ラー、『赤鬼』こと渕正信の自伝。渕のキャリアは既に50年を超えているのだ
が、凄いのは一貫して「全日本プロレス所属」であること。おそらく全世界の
プロレスラーで、50年以上単一団体に上がり続けたプロレスラーは、渕正信し
か居ない、と思われる。
そんな渕が、自分のキャリアを振り返りながら「全日本プロレス」の歴史を語
る、という内容。全日本はライバルの新日本プロレスと比較し、波風があまり
立っていない雰囲気。実際、ジャイアント馬場さんが亡くなるまでの間に起こ
ったスキャンダルらしいスキャンダルと言えばSWS騒動程度。この本の中にも
“クツワダクーデター騒動”などの些事(^^;)に関する記述があるが、やはり
全日本は概ね平和だったんだなぁ、と。これがプロレス団体として良いのか悪
いのか、僕には判断が難しいところ。
そして、いちばん印象深かったのが「道場」での練習内容。
やっぱり全日本のトレーニングの中心は「受身」であり、それが全日本プロレ
スのスタイルを構成していた、という事実。確かにこのおかげで全日本のリン
グは“堅実”ではあったのだが、前座戦線に一切派手さがなく、地味に感じたの
も事実(^^;)。猪木信者の僕としては、派手な技こそ無いモノの、感情剥き出
しで意地を張り合う新日本の前座の方がおもしろかった。受身の交換、となっ
てしまうと、やっぱり・・・。
その中でもいちばん地味だったのが、渕だった気がする。
もちろん渕にも輝かしい実績・・・インタージュニア・世界ジュニア奪取など・・・
もあるのだが、ソレが目立ったかどうか?と考えると・・・。
しかし渕が凄いのは「地味」なまま存在を確立し、現在に至っていること。
本人はソレを幸運と感じていそうだが、渕のキャリアの殆どは馬場の意向に沿
ったモノで、我が儘な動きは一切無かった。しかしソレを貫き、気が付いたら
ファンが渕正信というプロレスラーを「特別」としたのだから凄い。
どんな世界でも、「継続」は実は誰にでも出来ることではない。
それを成し遂げた男が語る半生、共感する・しないはともかくとして説得力が
あることは間違い無い、と思う。
こちらはUnlimitedで読むことが出来るので、馬場派のプロレスファンは必読。
猪木派でもかなり楽しめたけど。