#妙な語り部
▼生殖記 / 朝井リョウ(Kindle版)

懐かしき螺旋プロジェクト以来、久々に読む朝井リョウ作品。
2025年の本屋大賞にノミネートされていた作品らしいのだけど、どうやら受賞は
取り逃した模様。・・・うんまぁ、それもちょっと納得出来るかも(^^;)。
語り部が“ある男”の“日常生活”を分析しつつ描写する、という一人称視点構成。
おもしろいのが「語り部」が、”ある男”の生殖器である、という設定。”ある男”は
一見普通のサラリーマンだが、自分が性同一性障害者であることを自覚し、長期に
渡ってソレをひた隠しにしている状況。そのことに注力するが故に、普通の人間が
持っているハズの感情を次々に排除して自分に都合の良いように生きている、ぽい。
そういうワケでココで登場する生殖器に「本来の活躍の場」はほぼ無い(^^;)。
その反動でペラペラ喋りだしたのでは?と思えるくらいこの生殖器は饒舌で、男の
細かな心情に見事なアレンジを入れて喋りまくる。コレがイチイチ的を得ており、
説得力に溢れている。のだが・・・。
・・・ハッキリ言うと、内容がかなり重い。
文体はポップで読みやすいのだけど、ちょっと深く考えると恐ろしくなったり、気
持ちが悪くなったりする。それだけ深いところまで“人間を抉っている”、と評価す
ることも出来るのだが、そう考えながら読むとドッと疲れる。なんとか最後まで耐
えきったが、これはもう読書ではなくて修行(^^;)。読後感もけして良くなかった。
朝井リョウって結構アレな作家だなぁ、と改めて。
才能に関しては思いっきり認めるけど、僕との相性は良く無いかもしれない(^^;)。
殺傷能力の高い毒を持った作品は、本屋大賞にも向かないだろうなぁ、きっと。
