犬にきいてみろ

▼犬にきいてみろ / 池井戸潤(Kindle版)

大人気の池井戸潤花咲舞シリーズ一節
Kindle Singleと銘打たれたラインナップの一つで、人気作家短編を切り売り
する形態。おそらく数年後にはまとまって単行本になったりすると思うのだが、
人気シリーズをつまみ食い出来る感覚はちょっと嬉しい。

ドラマで大人気になった花咲舞シリーズだが、実はシリーズと言いながらこれ
までリリースされているのは「不祥事」一冊のみ(^^;)。ドラマはシーズン2
で制作されてるのにもかかわらずネタ枯れしないのは、全然違う主人公が活躍
する「銀行総務特命」からもエピソードを引っ張っているから。さすがにこれ
だけ人気が出てしまうと新エピソードを執筆せざるを得なくなったんだろうな、
池井戸センセ(^^;)。いや、個人的には非常に良い傾向です。

内容はある意味で“タイトル通り”(^^;)。
すっかりのイメージが定着した花咲女史が、相変わらず気持ち良い花咲節
聞かせてくれる、痛快経済モノ。なんだかんだでこの分野、完全に池井戸潤の
天下だな・・・。

199円のシングル盤としての役目は充分に果たしている。
願わくば、コレと他のエピソードをまとめた単行本を早めに出して欲しい。
でないと、ドラマのシーズン3が制作出来ない気がするので♪

水族館ガール3

▼水族館ガール3 / 木宮条太郎(Kindle版)

さて「水族館ガール」第三巻。
出向が突然長期化し、アクアパーク由香はいきなり多忙となる。
それにはしっかりワケがあって・・・という感じの内容。

由香水族館業務はさらにバリエーションが増し、内容も専門度が高くなって
いくのが興味深い。これまで真の主役であった筈のイルカたちはすっかり出番
が減り、代わりにサンゴ・ラッコ・マンボウという連中が幅を効かせてくる。
マンボウやサンゴはまだ想像出来る内容なのだが、ラッコやたら飼育が難し
い動物だ、というのが衝撃。僕にとってラッコは見るモノであり、決して飼う
モノでは無い。そういう考えてみれば当たり前の事実が、イヤに重くのしかか
ってくる感じが非常に切ない。

前二作で問題にしたラブコメ部分だが、今回はわりと鼻に付かないレベル
木宮条太郎、今作でようやく分配の適度さに気付いたらしい(^^;)。
おかげで特殊業務小説としてのまとまりは格段に上がっており、シリーズ3作
の中ではいちばん読み応えがあった。

巻を重ねる毎に精度が上がるのは非常に良いこと。おそらくこの後もシリーズ
は続きそうな気配が濃厚なので、次作のリリースを楽しみにしておきます。
・・・できればニッコリーの出番をちょっと多めで♪

水族館ガール2

▼水族館ガール2 / 木宮条太郎(Kindle版)

いきなりマイブームの「水族館ガール」、勢いに乗って第二巻
前作のラストで恋人同士になった由香だが、梶の大阪出向によりいきなり
遠距離恋愛、というシチュエーションから始まる。

この二人の関係、誤解があったり大喧嘩があったり行き違いがあったりと相変わ
らず波乱万丈なのだが、正直この恋愛小説の部分は“邪魔”ですよ、ええ(^^;)。
おそらく物語にバリエーションを付けるためにラブコメ要素が欲しかったんだろ
うけど、ならばもう少し状況を精査すべき。どうも無理矢理な感があるんだよな
ぁ、ちょっと(^^;)。

ただ、水族館業務の描写はを付けたいくらいすばらしかった。
特にラスト、創意工夫の末に行われた“実験”イルカライブ部分は、読んでいて
涙が出てくる程の感動劇“必死に「仕事」をすること”がどれだけすばらしいこ
とか、改めて思い出させてくれる、秀逸なエピソードだと思います!

このシリーズも残るところあと1作。
出来れば恋愛要素少なめ・仕事要素多め大団円を期待します。
・・・ドラマの展開も楽しみだ♪

アンマーとぼくら

▼アンマーとぼくら / 有川浩

待望と言って過言の無い、有川浩最新作
純粋な小説としては、2014年にリリースされた「キャロリング」以来だから、
どうしても期待値が高くなる。もちろん、僕もかなり期待して読んだ。

舞台は沖縄で、32歳の青年義理の母親と共に、亡き父の思い出の地・沖縄の
各所を巡る話。沖縄ローカルの人たちしか知らないようなとっておきの場所か
ら首里城のような王道観光ポイントまでが多岐に渡って紹介されている。

基本的に沖縄好きな僕ですらかなり反応出来る紀行文。おそらくコレは未だに
彼の地を踏んでいない人たちにも有効であり、ちょっとした指南書の役割を果
たす筈。よし、沖縄へ行こう!という人は一読してみるといいかもしれない。

ただね・・・。
僕と同様の有川浩のファンの人たちへ問いたいことがある。
・・・これ、面白かった?

帯には有川浩自身の言葉として「これは、現時点での最高傑作です」とある。
もし本人がそう思っているのであれば、それは彼女の過去の作品に対して凄く
失礼な気がする。ロードムービー的な手法もあざとさが先に立つし、女史の
同種の傑作である「旅猫リポート」のレベルには遠く及ばない。

作家本人の言葉に反論するのは正直遺憾だが、これまで読んで来た有川浩作品
の中では、最高にときめかなかった。レベルで言えば、デビュー作の「塩の街」
と同等くらい。ただし、アチラは有川浩の今の形が出来上がる前の作品だと考
えると、僕にとってはこの作品がいちばん・・・。

僕の読書スタイルが変わったのか、それとも有川浩が変わったのか?
今後もこの状態が続くとは思わないし、思いたくも無い。ただ、今は正直コレ
を最高傑作だとコメントする有川浩の精神状態が、本当に心配だ。

私が失敗した理由は

▼私が失敗した理由は / 真梨幸子

我が“教祖”こと、真梨幸子の最新作。
もちろん、今回も極上を更に極めたレベルザ・イヤミスである。

幸子様は僕にとってもう特別な作家であり、判官贔屓がどうしても出てしまうの
だが、冷静に分析してもその成長が新作が出る度に確認出来る現在進行形タイプ
凶悪な心情描写は昔から鋭かったのだが、現在はコレにレベルの高いミステリー
という要素が加わっており、そこから創り出される物語はスリリングなことこの
上無い。さらにリリースタイミングが非常に安定しており、そろそろあの悪意に
塗れたい、と感じる頃に必ず新作が出るのだから、マニア層の期待を絶対に裏切
らない。考えてみれば、とても凄い作家な気がする。

この自己啓発書のようなタイトルと装丁の作品も、もちろんその枠の中。
登場人物は誰も彼もが最悪、そして最低であり、救いようはまるで無い。ただ困っ
たことに、勘違いをし続けた人間がどんなサイアクな最後を迎えるのか?という、
これまた最低な興味を、僕は全く抑えることが出来ない。夢中になって読んでい
る途中で、ふとそういう下衆な自分が本当にイヤになったりもしてしまうのだが、
それでも読みたい、という衝動は治まらない。完全に突き抜けた、ある意味で
最高の作品である。

今回、珍しく真梨幸子は実在する作家の実在する作品に対し、総攻撃をかける。
糾弾された作家・作品とは誰で、何か? ・・・ソレを確認した時に、真梨幸子とい
う作家の恐ろしさが、否応無く解ると思う。

この世の誰が読んでも、サイアクで最高の悪意を感じられる筈。
幸子サマがブレない限り、この快進撃は当分続く。願わくば、末永く!