ちょっと一杯のはずだったのに

#ザ・密室


▼ちょっと一杯のはずだったのに / 志駕晃(Kindle版)

引き続き志駕晃作品。
自宅マンションで殺害された人気女性漫画家ラジオパーソナリティ
としても活躍していた彼女の遺体の第一発見者は、恋人でもあるラジ
オディレクター。彼は事件当夜泥酔して記憶が無い上に、彼女の家を
訪問した、と言う事実が。当然有力な容疑者として疑われるが、問題
は現場が完璧な「密室」であったこと。果たして・・・という内容。

なかなか見事な設定「密室」で、この手の愛好者はそこそこ読み応
えがあるんじゃないかな、と。出来れば挿絵現場の見取り図的なモ
ノが入っていれば、もっと楽しめたかもしれない。

かなりシビアな話なのにも関わらず、登場人物が皆どことなくユーモ
ラスなので構えることなく読める。さらに密室にフォーカスすること
で全体がコンパクトにまとまっているのが凄い。2時間の推理ドラマ
になったりすると面白いと思います!

・・・ただ、その時はタイトルをちょっと再考すべきかと(^^;)。
いくらなんでも適当過ぎるな、このタイトルは(^^;)。

オレオレの巣窟

#詐欺博覧会


▼オレオレの巣窟 / 志駕晃(Kindle版)

ちょっと忙しい隙にサクッと読めそうな軽い小説を、ということで、
「スマホを落としただけなのに」シリーズでお馴染み、志駕晃の作品
をチョイス。とにかく「タイトルで全てが解る」、という潔さ。

登場する詐欺はオレオレ詐欺結婚詐欺金融コーチ詐欺など多々。
特に今や主流であるオレオレに関しては、騙し電話から現金受け取り
に至るまでの巧妙な手口が詳細に解説されており、思わず戦慄した。
こういうので来られたら、もしかしたら騙される可能性も・・・とか思
ったのだが、よく考えてみれば僕には詐欺に遭う程の金は無い(^^;)。
要は夢物語、ということで、非常に楽しく読ませて貰った。

ちょっと納得いかないのは、最後がなんとなくハッピーエンドっぽい
感じで終わっていること。さすがに詐欺師には全くシンパシーを感じ
ることは出来ないので、ラストは全員地獄に落ちて欲しかったかも。

しかし、この世に蔓延る各種の詐欺対策マニュアルとして良いかも。
そういう電話がかかってきた人たちは、自衛の為に読んでおくと良い
と思います、ええ。

いきなりやってきた獣神ロス

#僕らのライガー


▼スポーツアルバム/獣神サンダー・ライガー現役引退記念アルバム

年が明けた頃に予約しておいた獣神サンダー・ライガー引退記念アル
バムが届いた。最近はこの手のムックは購入していないのだが、さすが
にライガーは別。無くならないウチに手に入れておこう、ということで。

最後のスタジオ特写に加え、引退後初のロングインタビュー、かつての
ライバルたちのコメントに加え、30年間のヒストリーなど読み応え満点。
もちろん興味が途切れないまま最後まで読んだのだが・・・。

最終ページ、表3に掲載された写真とそこに記されたサインを見た瞬間、
いきなりライガーさんの不在を認識してしまった。もう新日本の会場に
行っても、中継番組を観ても、そこで試合をするライガーの姿は観られ
ない。重度の獣神ロスに陥った模様。

こんなことは言いたく無いし、おそらく絶対に無いと思うのだが・・・。
・・・復帰してくれても全然いいんだけどなぁ、ライガー・・・。

イマジン?

#おかえり!


▼イマジン? / 有川ひろ

有川ひろの新作。
・・・この枕詞を、ずっとずっと書きたいと思っていた。なんつったって
純粋な小説およそ4年ぶり。この作家にここまで待たされたのは初め
てである。

僕の中での「問題作」となっている「アンマーとぼくら」以降の5年間、
有川ひろという作家には本当にいろいろあったんだと思う。入ってくる
話題は憶測やウワサでしか無く、その中に良い話は一つも無い。もしか
したら作家として終わってしまったのではないか?と真剣に感じていた。
だから改名後初の小説であるこの本には、最初から真剣に向き合わざる
を得ない。

書き下ろしの長編、である。
ゴジラに感銘を受け、映像業界で働くことを夢見て上京し、ほぼ不可抗
力の状況挫折を余儀なくされた若者が、ひょんなことからテレビの制
作現場に飛び込んで行く・・・という内容。

かなりのあるハードカバーをあっという間に読了。
最初の章を読み終えた瞬間に「こういうのが読みたかったんだ、オレ」
と心の底から思った。自ら幸福を拾いに行く積極的な連中の話は最初か
ら心にストンと落ちてくるし、共感度も半端ない。そもそも有川浩とは、
こういう「熱いお仕事系」を書かせたら、右に出るモノが居ないほどの
表現者だったことを、まざまざと思い出した。

構成的な工夫も正直凄い
ここで制作される映画やドラマの半分は過去の有川作品をアレンジした
モノだからイチイチニヤリと出来るし、時折提示される「台本」のレベ
ルも高い。女史のこれまでのキャリアが全く無駄になっていないところ
が、何よりもすばらしい。

そして個人的に、僕の後輩たちに是非読んで貰いたい作品でもある。
おそらく皆が解らないまま行っている「制作」という仕事の何たるかが
理解出来ると共に、“製作”“制作”の違いなど、今さら聞けない系の疑
問が解ける部分が多々あるハズ。そして、描かれる現場は我々に近い世
界の話だから、自分たちにも希望とか未来がある、と信じられるように
なると思うので。

ある意味万感の思いで、僕の大好きな作家の一人にずっと言いたかった
言葉を記しておきます。

おかえりなさい! 待ってたぜ!

平成維震軍「覇」道に生きた男たち

#やってやるって!


▼平成維震軍「覇」道に生きた男たち / V.A

G SPIRITS MOOKの記念すべき10冊目は、なんと平成維震軍
1991年に突如始まった新日本プロレス空手・誠心会館との抗争劇か
ら生まれたユニット。ココに目を付けるあたりがG SPIRITSのセンス

実際のところ、誠心会館の青柳・齋藤と、新日本の越中・小林の抗争は
本当に熱くなった。異種格闘技戦云々のレベルの話ではなく、バックボ
ーンの違う双方が本気丸出しで闘うのだから、コレが面白く無いワケが
無い。闘魂三銃士が全盛期を迎えた頃に一方で毒々しく狂い咲いたベテ
ランの意地が、ファンの心を鷲掴みにする、という見事な展開を魅せて
くれたのを、昨日のことのように覚えている。

そんな平成維震軍に所属した7選手の共著。
執筆者は、越中詩郎・小林邦昭・木村健悟・Gカブキ・青柳政司・齋藤
彰俊・AKIRAの7人。小原道由後藤達俊の参加が無かったのは残念だ
が、この手の書籍にはなかなか登場しない選手たちの談話が多々。特に
青柳館長の項は、非常に興味深く読ませていただいた。

嬉しく感じたのは、平成維震軍に在籍した全ての選手がこのユニットに
「愛」を未だに持ち続けていること。プロレスラーの多くはかつて自分
が在籍したユニットに対してドライなことが多い傾向があるのだが、皆
「すばらしいユニットだった」と一様に語る平成維震軍は、間違い無
く稀有な存在。確かに僕も、プロレスファン全体から煙たがられている
木村健悟を真剣に応援したのは、この時代だけだったかもしれない。

もちろんキャリアのあるプロレスファン向けの書籍。でも、あの時代の
「熱さ」を覚えている同士たちは、一読する必要があると思う。
初代の維新軍より、断然好きだったな、平成維震軍