ふる

▼ふる / 西加奈子

直木賞受賞時のコメントを聴いて以来、「近いうちに必ず読むべき作家」
なっていた西加奈子作品に遂に手を出す。以前アンソロジー内の短編で一篇
を読んだのだが、いわゆる長編は初めて。

表紙はひらがな二文字のシンプルなタイトルに、かんたんな線で描かれた
帯には『私は「いのち」のことが書きたかった。』という印象的なキャッチ、
そしてこれ以上無い笑顔を浮かべる作者本人。・・・さて、これは???

誤解を恐れずに言うのなら、自分勝手「散文」と言った趣の内容。
その手の作品は正直あまり好きではない。苦手な大阪弁も多々登場するし、
個人的には「ダメだぁ〜!」となるタイプの作品なハズ。しかし・・・。

文章全体に妙なリズムがある。
忌野清志郎のスローなメロディを聴いている時と同じ感覚、と言ったら褒め
すぎかもしれないが、惹き付けられる何かが確実にある気がする。

帯にあった「いのち」の正解は人の数だけあると思うが、西加奈子は自信の
「いのち」を得体の知れない説得力プレゼンする。なにがなんだか解らな
いうちに気持ち良くなり、知らないあいだに魅了されてしまった感。

西加奈子、彼女もまた逸材
それが100年に1人のレベルなのかどうかは、幾つか他を読んで判断する。
おそらく、僕の予想は間違っていない気がするけど。