▼検事の死命「佐方貞人」シリーズ / 柚月裕子(Kindle版)
柚月裕子・佐方貞人シリーズ。
およそ1ヶ月待った電子書籍がやっとリリースされたので、さっそく読んでみた。
今回ももちろん連作短編の法廷ミステリーなのだが、シリーズを通して読んで
来た人たちにある種の「納得」を与えてくれるエピソードがいくつか。特に前
半、非業とも言える死を遂げた佐方の父に関するエピソードでは、読者感情的
に腑に落ちなかったストーリーがしっかり処理されており、このシリーズでは
珍しく、実に爽やかな展開に。
そして、ラストの中編「死命を賭ける」で、検察という組織の歪な構造に迫っ
ているのがポイント。事件自体はどうということの無い条例違反なのだが、そ
れが検察で働く何人かの人生を左右する事件に発展していく様がダイナミック
に描かれている。法廷での検事・佐方と弁護士との応酬は思わず手に汗を握っ
てしまうほどのリアリティ。いやもう、ただただすばらしいと思います。
このリリースで、このシリーズは全ての作品の電子書籍化が完了。今のところ
この作品が最終だが、こうなってくると弁護士に転職した佐方のその後が非常
に気になる。ぜひぜひ、早い段階で続編を出して欲しいなぁ、本当に。