・・・一人の男の「生き方」として。
ダイナマイト・キッドは「今日を生きるために明日を顧みなかった」男。
将来のことなど微塵も考えず、その時・その場で最高であろう、と、フル
スロットで駆け抜けた。
そもそも、最初にTVで見た時のキッドは、ロングヘアの王子様スタイル。
贔屓目に見ても体重70kg台前半の細身、そして端正な顔立ち。それでも
目の鋭さだけは際だっており、一瞬で「ヤバいヤツ」だと解った。
いちばんビックリしたのは二度目のTV登場時。
カルガリーで藤波辰爾の対角に立ったキッドは明らかに一回り大きくなっ
ており、当時日の出の勢いだった藤波と好勝負を展開。人間というのは、
短期間でここまで変われるのか、と恐ろしくなった。
三度目。
身体は更に大きくなり、筋肉の塊となる。さらにアタマをスキンヘッドに
剃り上げ、得意技はダイビング・ヘッドバッド。スキップ・ヤングにこの
技を繰り出した時、仕掛けた側のキッドが流血。血を拭おうともせずに恐
ろしい目つきを魅せたキッドの下で、ヤングはピクリとも動かなかった。
そこから、ずっとキッドを観てきた。
タイガーマスクとの一連の抗争や、コブラ・スミスとの三つ巴決戦、全日
本に移籍してからはファンクスやハンセン&ブロディに真っ向から立ち向
かう。WWE時代はステロイド(著書で「馬用を使用」と明言)を使い、
ヘビー級と遜色ない身体を作り上げ、超重量級の相手と毎日のように闘った。
・・・案の定、晩年のキッドは見るに忍びない姿に変わり果てた。
それでも自らの行為を決して否定しない。良いか悪いかはともかく、明日
を捨てた男の生き様はただただ「カッコイイ」としか言い様がなかった。
最後に、キッドのラストインタビューとされる記事を引用する。
ーーー身体を壊してしまったことについて、後悔していますか?
「別に後悔はしていない。すべては自己責任だよ。」
・・・ダイナマイト・キッド、2018年12月5日、60歳の誕生日に永眠。
鋭利な刃物にして爆弾小僧の人生に、最高の感謝と、最大のリスペクトを。
また必ず、どこかで。