葉真中顕強化月間、今作はちょっと不思議なお話。
構成は連作短編集で、内容はバブル期の日本で起こったあるカルト教団の
蛮行、それに翻弄された人々の物語、という感じ。多種多様な人物が登場
してくるのだが・・・。
着想のヒントは間違い無くあの教団が起こした地下鉄サリン事件だと思う
のだが、その「事実」を巧妙に処理したファンタジー作品と言えなくも無
い。しかし、ファンタジーと言うにはひたすらに「重い」内容。
読み進めるうちに、各章を繋ぐ「線」がハッキリ色濃くなって行くタイプ。
それぞれの人生を歩いて来た筈の人たちが、過去に教団関係者と何らかの
関係を持っており、更に全員がある種のコンプレックスを抱えている、と
いうのが大きなポイント。
エピローグの書き方が本当に凄く、おそらく最後まで読んだ人たちを闇の
底に叩き落とすほどの効果。扇動的な表現はほぼ無く、淡々とした文章な
のだが、その「救いの無さ」に、どうしようもない恐怖まで感じてしまった。
強化月間は進行中だけど、一回休みを入れた方が良いかも(^^;)。
この作家の破壊力、ちょっと只事では無い感じなので。