マスカレード・ゲーム

#水天宮ロイヤルパークホテル


▼マスカレード・ゲーム / 東野圭吾

東野圭吾の新作はマスカレード・ホテルシリーズ
3年に一度のペースで続いてきたシリーズだが、前作「イブ」から今作ま
でのスパンはなんと5年。そして、おそらくコレが最終作品となる気配が。

すっかり偉くなった『ホテルマン刑事』こと新田浩介は、もちろん今回も
高級ホテル、ホテルコルテシア東京潜入。偉くなってもこういうことを
やらされてしまうのが哀愁をそそる(^^;)のだが、無理なくそうなるように
状況設定を作ってしまうところが東野圭吾の凄いところ。そして、もう1人
の主役、超絶コンシェルジュ山岸尚美も遅ればせながらしっかり登場す
るのでご安心を。

そして、久しぶりにミスリードが多発する本格ミステリーを堪能。もちろ
ん場面ごとに犯人を予想しながら読んでいたのだが、結果的に大ハズレ(^^;)。
最近はミステリーを読んでも最後まで犯人が解らないことは殆ど無くなっ
たと思っていたが、まぁ見事に騙されました。やっぱり凄い作家だな、こ
の人は。

事件解決後のラストシーンに関しては、おそらく賛否両論があるかと。
作品の結末としては全然アリだと思う僕だが、もしマスカレードホテルシリ
ーズが終わってしまう可能性・・・というか、このラストなら終わるべき・・・が
あるのはいただけない。読みたいなぁ、次作も。

チョウセンアサガオの咲く夏

#漢


▼チョウセンアサガオの咲く夏 / 柚月裕子(Kindle版)

日本一漢らしい女流作家柚月裕子の新作は11篇からなる短編集
この作家の短編集はおそらく初だと思うのだが、この中の数本はアンソロ
ジー系の作品で発表済みのモノ。読み終わった後に気付いたけど(^^;)。

相変わらず、「漢」を感じさせるハードボイルドな雰囲気は健在。特に、
やや古い時代を描いた『泣き虫の鈴』『影にそう』は、その世界観が顕著
で、ずっしりとした重厚感が。この2篇だけで、ちょっとした長編を読ん
だ気分にさせてくれるのは凄い。

他にも佐方貞人シリーズのスピンオフや、珍しいブラックユーモアなど、
バラエティに富んだ内容なのだが、注目はあの【おそ松さん】のキャラを
登場人物とした『黙れおそ松』かな?コレはかなり笑えます。

少しとっちらかった感こそあるモノの、短編集として見れば良作揃い。
完全新作の繋ぎに是非!

ONE PIECE magazine Vol.14

#RIVALS


▼ONE PIECE magazine Vol.14

コミックス102巻のリリースに合わせ、翌日に発売されたOPM13号
今回の特集のタイトルは「RIVALS」。これまでルフィと戦ってきた
総勢39名のライバルたちが、かなりの物量で紹介されている。

初期のクリークなど、存在自体を忘れていた(^^;)キャラも居たが、
それよりも実力的にライバル認定したくないキャラもチラホラ。
昔ならその筆頭にベラミーの名前を挙げた気がするが、彼が見事な
ベビーターンを果たした今、いちばんのクソ雑魚候補(^^;)は、や
っぱりホーディ・ジョーンズかな? ワポルシーザーも捨てがたい
けど。

ちなみに次号vol.15では『ONE PIECE FILM RED』の総力特集。
映画観てから読むべきなんだろうなぁ、きっと。

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#イヤミスの教祖 #ミスリードメーカー


▼シェア / 真梨幸子(Kindle版)

2022年最初の真梨幸子作品。
今回もイヤミスの王道を行く作品で、もう他の追随を許さないクオリティ
メチャクチャ面白かったのだけど、ちょっとだけ背景を深堀り

今作品のテーマ「真梨幸子のコロナ禍解釈」にすべきかと。
何人かの作家がコロナ禍の状況を加味した作品を出しており、そのおおよ
そは通り一辺倒なカタチに収まってしまいがち。しかし、我らが幸子サマ
発信手法はあまりに見事コロナ連鎖倒産や何故か価値の上がった不動
、そして持続化給付金詐欺など、実際に起こった事象をしっかりとイヤ
ミスにアダプト。これにはハッキリと唸らせていただきました

残念ながら今回は珍しく途中で結末が読めてしまったが、それすらも楽し
めてしまうのがポイント。登場人物に善人の類いは一人としておらず、誰
もかれもがダメ人間(^^;)、という状況で作品を構成するのは、真梨幸子に
しかできない芸当な気がしてならない。

イヤミスが大好物な僕からすると、至極の快楽
次はどんな悪意が来るのか、と思うと、もう楽しみでしょうがない。
今年の真梨幸子にも更なる注目を!

タコピーの原罪

#大問題作


▼タコピーの原罪 / タイザン5(Kindle版・上下巻)

ジャンプ+で連載されていた大問題作タコピーの原罪」。
ネットでは各所で話題になっており、僕も早い段階で上巻は読んでいた
のだが、ここに来て下巻がリリース。いいタイミングなので、物語を通
したカタチでレビューを。

ゆるキャラにしか見えない主人公の宇宙人・タコピーが放り込まれたの
は、残酷すぎるイジメの渦中に居る女の子の側ハッピー星人であるタ
コピーは、その少女をなんとか楽しくさせようとするのだが、やること
なすことが全て裏目に出て・・・という内容。

とにかく、話題になる理由明白。それは「イジメ」の描写がリアルを
通り越して【恐ろしさ】を感じるレベルであるから。

僕らの世代からハッキリとしたカタチを見せ始めた「イジメ」の現状は、
加担する側・される側のどちらかに、強制的に属されてしまう場合が多い。
今から思えば吐き気のする状況なのだけど、だからこそいじめている人の
気持ちも、いじめられている人の気持ちも、それなりに解ってしまう。
普通の人間なら、そこでジレンマを感じるハズ。

この作品で現出するイジメは相当酷いモノで、その加害者は因果応報と
ばかりに恐ろしい目に遭うのだが、その後に「何故そうなったのか?」が
しっかりと明らかになる。ここで生じるジレンマは、僕がこれまで味わっ
て来た同種のモノの中でも相当な根深さで、深刻なトラウマになったほど。
正直、少年マンガのカテゴリーに入れるのもどうかと思ったのだが・・・。

まさか、こういう落とし処があるとは!と思わず感心したラスト
ある種無理矢理な感こそあるものの、この終わり方であればなんとか心の
モヤモヤを払拭できる。いや、本当に良かった、マジで。

とにかくジャンプ+の連載は要チェック
今年の「このマンガがすごい!」、取るだろうな、きっと。