ふたつの名前

▼ふたつの名前 / 松村比呂美(Kindle版)

読みたい作家の新刊が今月末まで出ない事が判明。
ということで「読むモノに困ったらKindleストアで松村比呂美作品」を実践。
今回はシンプルなタイトルの作品を選んでみた。ちなみに長編

高齢者向けの結婚相談所でチーフを務める20台前半の女性が主人公。
仕事はもちろん、父母と同居する家庭も順風満帆。全く問題の無い幸せな生活
を送っているのだが、時折正体の解らない「不安」が襲う。主人公がその正体
を探り始めた時、全ての歯車が悲しく動き出す・・・というお話。

いろいろな要素が絡み合った作品なのだが、主題は「人間の正義」だと思う。
間違い無く正しいことをするために、法を犯さざるを得なかった人たちの苦悩
と葛藤が痛いほど良く解り、場面によっては苦しくなる程。当然展開は重苦し
いのだが、気がつくと読了していた、というくらい読みやすい。この作家の
文章は、そういう魅力に溢れていると思う。

そして「高齢者の恋愛・結婚」というテーマに踏み込んでいるのも注目すべき。
もう間もなく、否応無くそういう立場に立つ僕としても、考えさせられる点の
多い佳作であった。

まだ3月も初旬。松村作品、もう2、3読むことになりそう。