▼水の通う回路(上) / 松岡圭祐(Kindle版)
松岡圭祐のわりと初期の長編。
サブタイトルに「完全版」とあるように、初版から改稿に改稿を重ね、現代の
状況に辻褄が合うようにセットアップされたモノらしい。そういうとこ、凄く
拘りそうな作家ではある。
ある日、日本全国のあらゆる場所で一斉に起こる子どもたちの事故。ある者は
自らの腹部をナイフで刺し、あるものは走行中のクルマに飛び込む。全員に共通
しているのは「黒いコートの男に殺されそうになった」という供述。当事者だけ
でなく、周囲の人間にまで目撃されている「黒いコートの男」が実在する気配は
無い。被害者に共通しているのは、全員が最新の人気ゲームソフトをプレイして
いた、という事実のみ。果たしてこの事件の真相とは・・・。という内容。
松岡作品にしてはかなり重い。電子書籍版は上下巻の2巻構成だが、上巻1冊を
使って各キャラクターの心情や立ち位置を明確にしている。おそらくは下巻で
謎解きが進んで行く、と思われるが、この初期設定の段階で既に「読ませる」
体勢を整えてくるあたりがさすが。特に巻き込まれたゲームソフト会社の社長
の心情描写はリアリティに溢れ、緊迫感が半端で無い。続きを読むのが本当に
楽しみ。
取り敢えず下巻は購入済み。ストーリーについては読破後に。