被疑者04の神託

▼被疑者04の神託 煙 完全版 / 松岡圭祐(Kindle版)

またもや松岡圭祐初期作品
こちらも完全版と銘打たれた電子書籍で、ルーツを調べると単行本「煙」から
文庫で大幅に加筆修正された「伏魔殿」、そしてこの「被疑者04の神託」と3度も
リニューアルが繰り返されている。タイトルばかりか内容も、結末まで違うとか。
とにかくこの完全版を読んでみた。

ストーリーをものすごく簡単に言うと、初老の冴えないタバコ屋が古来より伝わる
地元の行事、「諸肌祭り」「神人」を努めるに至った経緯および顛末。

ちょっと解説。
諸肌祭りの神人は毎年一人選定され、厄除けの象徴としてほぼ裸で大衆に晒される。
神人に触る為に、同じく裸同然の男たちが全国より何千人も集まり、祭り開始と
同時に神人めがけて殺到する、という恐ろしいモノ。群衆の暴力に立ち向かう神人
は地元の英雄とされる、という感じ。もちろんこの祭りはフィクションだが、モデル
になっているのは愛知県稲沢市で行われている「国府宮はだか祭り」。実際に凄く
男臭い、勇壮な祭りだそうな。

そしてこの作品なワケだが・・・。
重すぎ(^^;)。いやもう、圧迫感やら焦燥感やらが本当に尋常じゃ無いくらい迫っ
てくる。正しく人間のクズ的な世捨て人生活を送っている主人公のタバコ屋の存在
にマジでイライラするし、その生い立ちに自分を重ねて更にイライラする(^^;)。
そして作中に山ほど出てくる喫煙シーン。重要な部分なのだけど、描写の仕方が
あまりに酷い(^^;)。間違っても喫煙者が擁護される事は無いと思う。

そういったクソ重い部分9割を占めているのだが、ラストのまとめ方が絶妙
実は文体を重くした上で読者を文字通り「煙」に巻き、意外性を出す、という計算
され尽くされた作品。読書開始時はかなりキツかったのだけど、読了後はそれなり
爽やかさまで感じちゃったのだから、脱帽するより他無い。

ただ、展開が派手になるところまで読み続けられる人が何人居るのか(^^;)?
根性を試される作品。あ、通常の松岡作品ファンには辛いです、きっと(^^;)。