禁じられた遊び

▼禁じられた遊び / 吉村達也(Kindle版)

誉田哲也・湊かなえ等の重要作家の新作ラッシュが落ち着き、取り敢えず
ツナギ感覚で購入した作品。吉村達也はKindleのリコメンドに時折表示される
作家。タイトルが印象的だったので、まずコレを購入してみた。

いわゆる不倫モノ
ものすごく乱暴に言うと、結婚生活に満足出来ないクソワガママな女が、不倫
機にとんでもないところまで堕ちていく話。ドロッとした人間関係とか、官能的
なシーンとか、この手のモノにありがちな描写が殆ど心に残らない、という(^^;)。
このオンナがマインドコントロールされる場面が最大の見せ場だと思うのだが、
読中「いや、いくらなんでも気付くだろ、フツー」的な感覚をしばしば覚えた。

心情描写の中にネタが完全にバレてしまう表現が多々。情報過多、というか、
ちょっと書き込みし過ぎ。この部分をもう少しサラッと書いていたら、ちょっ
と違った印象になったかもしれない。惜しいなぁ・・・。

ただ、ちょっとした短編を読ませる感覚で全体を短くまとめる手法は良いと思う。
このテイストのまま大長編に仕上げてしまったら、きっとスカスカな感じしか
残らないと思うのだが、適度な短さ故に許せる、という感じ。

「ツナギ」という意味では過不足無し。ちょっと他の作品も読んでみたい気が
するので・・・。

ヨシヒコ シーズン3!

あれからずっとどハマり中の「勇者ヨシヒコ」シリーズが、シーズン3の制作
を発表した。タイトルは「勇者ヨシヒコと導かれし7人」
・・・絶対に、7人は出ない気がする(^^;)。

シーズン1・シーズン2を最近見たばかりなので、約4年振りの新シーズンも
僕にとっては超タイムリー2016年の放送、とざっくりなスケジュールしか
出ていないのだが、それもこのシリーズらしくて良い。

楽しみだぜ、コレ!

参考:「勇者ヨシヒコと導かれし7人」公式(テレビ東京)

Poison Daughter,Holy Mother

▼ポイズンドーター・ホーリーマザー / 湊かなえ

今作のキャッチコピー
「湊かなえ原点回帰!人の心の裏の裏まで描き出す極上のイヤミス6編!!」
そんなワケで、湊かなえの新作は得意の連作短編集である。

最近の湊かなえの著作は“イヤミス”という自らが作り出したジャンル内に納ま
らない作品が多い。コレは決して悪いことでは無く、「告白」で付いてしまっ
たある種負なイメージを時間かけてゆっくり払拭していった結果。僕も初期か
らの湊マニアであるが故に、女史の新作には必ずイヤミスを期待していたのだ
が、最近ではその期待すら無くなった。強烈なイヤミスでなくても、普通に面
白い作品をコンスタントにリリースしてくれる。そういう、違う信頼感が出て
きたところで、こんなのを持って来やがった(^^;)。

「ポイズンドーター・ホーリーマザー」
直訳すれば「毒娘と聖母」。タイトルからしてもうなんかアレな雰囲気を醸し
出しているのだが、今回の作品はそういう期待を全く裏切らない気合いの入っ
たイヤミス。“元祖イヤミスの女王”の面目躍如。そして結構な問題作でもある。

テーマは母娘(おやこ)。
全6篇のどの話も、必ず歪んだ母娘関係を基としたエピソードとなっている。
自分の行き場の無さを母の所為にする娘、自分の考えや育て方を強要する母。
ドロドロ過ぎて収拾の付かない状態を、丹念に拾って物語を構築するテクニ
ックは一段と研ぎ澄まされているし、読人の神経を逆なでする嫌悪感満点
言葉選びも秀逸である。完全なる劇薬。下手すればここまでで築いてきた
失い兼ねないのだが、いいんだろうか?(^^;)。

男性の僕ですら、あまりの嫌悪感にページを捲る手が止まったほど。
だから、女性の読むところを想像するだけでかなりの恐ろしさを感じる

イヤミス同好の士には必読図書
そうでない人たちは、結構覚悟してから読んだ方がいい
・・・湊かなえって、やっぱり本当に恐ろしいのかもしれない。

KYOSUKE HIMURO

氷室京介「LAST GIGS」2016年5月23日(月)
本日の公演を最後に、稀代のロックシンガー・氷室京介は“引退”
以降、ライブの場に立つことは二度と無い、と宣言していた。

普通、ミュージシャンに「引退」という概念は無い。
大物であれば大物であるほど年齢の重ね方が上手く、ペースを落としな
がら創作活動を続ける場合が殆ど。もちろん氷室もすばらしい年の取り
方をしており、そういう大物たちと同じ位置に行く、と信じて疑わなか
った。しかし・・・。

おそらく氷室にとって“ライブ”最上級だったのだ、と思う。
ソングライティングやレコーディングなどのずっと上を行くくらいに。
少年時代の僕らを魅了したBOφWYはまぎれもなくライブバンドだったし、
ソロになってからも氷室はライブの帝王であり続けた。聴覚に障害を抱え
なければ、きっと死ぬまでその位置に居た筈である。

冒頭からBOφWY時代の曲が続けて演奏された時は、さすがに泣きそうに
なった。あの頃と殆ど変わらない動きでステージを跳ね回る氷室に「老い」
は全く感じられなかった。しかし、パフォーマンス中に幾度もイヤモ二に
手をやる姿だけが痛々しい。心臓が締め付けられそうだった。

しかし、終盤に入ってのMCで氷室は「ゆっくりアルバムを創る」と明言。
その一言で救われた。あくまで今回は最後のライブ。氷室が音楽活動を止
めてしまうワケでは無い。だとするなら、違った形でオーディエンスの前
に姿を現す日がきっと来る・・・。そんな気がした。
だって、氷室は今までもこれからも、ずっとライブの帝王なんだから。
そう思ったら、ずいぶん肩の力が抜けた。

そこから、努めて冷静にライブを観ることが出来た。
ソロになってからの氷室から大分距離を置いてきた僕にとって、熱狂する
氷室ファンの姿は圧倒的だった。人生のターニングポイントで僕が崇拝し
ていた氷室京介は、今も何万・何十万もの人の人生に影響を与え続けてい
。それが確認出来ただけで、このライブを観て本当に良かった、と心か
ら思えた。

水道橋周辺だけでなく、僕の通勤駅や会社最寄りの駅等でLAST GIGSの
Tシャツを着た人たちを多々目撃した。その半分以上は僕と同年代。中年
を通り越し、既に老年期に差し掛かった人たちであった。

あれから僕らはきっと、いろんなモノを切り捨て、いろんなモノを諦めて
生きてきた。でも、氷室の最後は観ないと、終われないよね?
そんな人たちと共に、氷室の見事な最後を目撃出来たことに感謝。
そして、普通なら絶対取れないチケットを取ってくれたWくんにも感謝。

僕はこれで、終われる。

UTAMARU LAST STAND

名実共に“日本一の噺家”である桂歌丸師匠が、本日笑点司会勇退
歌丸ラスト大喜利スペシャルは、生放送を含めた1時間30分の華舞台。

「笑点」は50年以上続く長寿番組。
僕が物心付いた頃から番組は放送されており、その頃から回答席の一番
下手の位置に歌丸師匠は座っていた。月日が経って座る位置はもう一つ
下手司会者の席に移ったけど、歌丸師匠はずっと笑点の画面に居続け
てくれた。

そんな師匠が笑点・大喜利から消える。
来週から司会は春風亭昇太師匠。大方の予想を裏切る思い切った人事は、
きっと歌丸師匠の意向が反映されたに違い無い。歌さん以外に圓楽師匠
を弄っていちばん面白いのは、きっと昇太師匠。そして、長期間の司会
がこなせる実力者も、きっと昇太師匠以外に居ない。発表時には驚いた
が、考えてみればここまで納得出来る人事も無い。

今日の放送も、最初から最後まで笑った
歌丸師匠は最後まで自分の仕事をきっちりこなし、最高に格好良く司会
の座から降りていった。あんな凄い79歳は、今まで見たことが無い。

だけど、大笑いしながらも涙が全く止まらない。来週からこの画面に
桂歌丸が居ない、ということが寂しすぎる。

体調があまりよろしくない、という話は良く聞く。
それでも、高座にはずっと上がり続けて欲しいし、違った形で笑点にも
ずっと関わって欲しい。

さすがに最後は、テレビに向かって正座した。
いままで本当にお疲れ様でした。

・・・お願いです。いつまでも、いつまでもお元気で居てください!