Poison Daughter,Holy Mother

▼ポイズンドーター・ホーリーマザー / 湊かなえ

今作のキャッチコピー
「湊かなえ原点回帰!人の心の裏の裏まで描き出す極上のイヤミス6編!!」
そんなワケで、湊かなえの新作は得意の連作短編集である。

最近の湊かなえの著作は“イヤミス”という自らが作り出したジャンル内に納ま
らない作品が多い。コレは決して悪いことでは無く、「告白」で付いてしまっ
たある種負なイメージを時間かけてゆっくり払拭していった結果。僕も初期か
らの湊マニアであるが故に、女史の新作には必ずイヤミスを期待していたのだ
が、最近ではその期待すら無くなった。強烈なイヤミスでなくても、普通に面
白い作品をコンスタントにリリースしてくれる。そういう、違う信頼感が出て
きたところで、こんなのを持って来やがった(^^;)。

「ポイズンドーター・ホーリーマザー」
直訳すれば「毒娘と聖母」。タイトルからしてもうなんかアレな雰囲気を醸し
出しているのだが、今回の作品はそういう期待を全く裏切らない気合いの入っ
たイヤミス。“元祖イヤミスの女王”の面目躍如。そして結構な問題作でもある。

テーマは母娘(おやこ)。
全6篇のどの話も、必ず歪んだ母娘関係を基としたエピソードとなっている。
自分の行き場の無さを母の所為にする娘、自分の考えや育て方を強要する母。
ドロドロ過ぎて収拾の付かない状態を、丹念に拾って物語を構築するテクニ
ックは一段と研ぎ澄まされているし、読人の神経を逆なでする嫌悪感満点
言葉選びも秀逸である。完全なる劇薬。下手すればここまでで築いてきた
失い兼ねないのだが、いいんだろうか?(^^;)。

男性の僕ですら、あまりの嫌悪感にページを捲る手が止まったほど。
だから、女性の読むところを想像するだけでかなりの恐ろしさを感じる

イヤミス同好の士には必読図書
そうでない人たちは、結構覚悟してから読んだ方がいい
・・・湊かなえって、やっぱり本当に恐ろしいのかもしれない。