東野圭吾最新作は「白銀ジャック」から続く“雪山シリーズ”の書き下ろし。
雪山シリーズと言えば、氏お得意のウィンタースポーツにフォーカスした
コメディ要素のあるサスペンス、というのがこれまでのパターンだったの
だが、今回は違う。なんと、全編が特殊な恋愛小説なのである。
体裁は連作短編で、篇ごとに語り部が変わる形式。最終的に全ての話が繋
がってオチが付く、という王道パターン。しかし・・・。
最初の篇を読み終わった段階で「なにこれ???」と思った(^^;)。
東野圭吾には「歪笑小説」や「毒笑小説」等のブラックに寄ったコメディ
も多々あるのだが、この作品はこれまでのコメディと全く違うタッチ。
正直、東野圭吾作品とは思えなかったくらい。
とにかく全編でニヤニヤが止まらない程の秀逸なコメディなのだが、そこ
はさすがに稀代のミステリー作家。笑いの中に伏線を多く散りばめ、最終
的にそれらを全部拾いきってしまうのだから、もう本当に恐れ入る。
スリル満点のブラック恋愛小説、とでも言えばいいんだろうか?
東野圭吾、また新境地を切り開いちゃったのかもしれない。
最後の最後まで底意地の悪い小説だけど、これまでの雪山シリーズの中で
は完全に異色の作品であり、満足度は不思議に高い。
帯の「この恋の行方は天国か地獄か」は名キャッチ。オススメです、これ!