神様の裏の顔

▼神様の裏の顔 / 藤崎翔 (Kindle版)

ちょっと前からKindleストアのリコメンドにやたら出てきた作品。
第34回横溝正史ミステリ大賞受賞作品で、作者の藤崎翔はなんと元芸人
コントのネタを書いてた人らしい。そういうバックボーンのある人は、
おおよそで面白い物語を書くのだけど・・・。

人格者の見本のような元教師が死んだ。
通夜の席は盛(?)況、誰もが涙し、悲しみは最高潮。葬儀屋が太鼓判を
押すほど完璧な葬式で、ある疑惑が持ち上がる。まるで「神様」のような
故人は、実はとんでもない犯罪者だったのではないか?・・・。容姿端麗な
2人の娘、元同僚の教師、教え子で子持ちの男性、近所の主婦、なんかギ
ャル、そして売れないお笑い芸人、といった参列者それぞれが疑念を持ち、
ひょんなことからそれらが一本の線に繋がって・・・という内容。

語り部が次々に変わり、それぞれが自分と故人の関係を思い返し、その中
で小さな綻びを発見することで物語が展開する、という仕組み。言ってし
まえば、典型的「実は何も起こらなかった」系の話と見せかけ、最後に
は驚愕の真実が明らかになる、という王道叙述トリック。そういう意味
ではトリックが若干稚拙で、ミステリーを数多く読んでいる人なら、割と
かんたんに謎が解けてしまうのではないか?という懸念あり。

しかし、ラストに至るまでの間に細々した仕掛け笑いが施され、定番と
解っていても全く退屈しない。コント師らしい言葉の選び方は非常に心地
よく、スピード感も充分。予想通り、読み応えはバッチリであった。

・・・なんで芸人として売れなかったんだろうなぁ、この人(^^;)。
ネタが見てみたかった気がするけど、どうやらそれは叶わぬ模様。なので、
取り敢えず他の作品を読んでみることにします。かなりオススメだ、コレ。