ちょうど読むべき本がなくなり、Kindleストアを徘徊していたら見つけた
辻村深月のシングル。一遍の短編だけが収録されており、読書に費やした
時間はたった10分。しかし、これが恐ろしい10分だった。
ここからややネタバレ注意。
主人公はある程度の経験を積んだ小学校の女性美術教師。若い頃の教え子
(正確にはそうでは無いらしいが)に今をときめくアイドルグループのメ
ンバーが。彼に創作の機会を与えたことを、ちょっとだけ自慢に思ってい
る、という、実にありがちな教師。そんな彼女の元に、母校訪問のテレビ
番組の収録に件の彼がやってきて・・・という内容。
「ツナグ」などで一瞬垣間見える辻村深月の「毒」の部分が大きくクロー
ズアップされる物語。文中から感じるのは「怖い」という感情よりも、ど
うしようもない居たたまれなさ。もし自分がこの教師の立場だったら、と
考えると、背筋どころか全身に冷たいモノが流れると思う。
この10分の何が怖いのかというと、自分も彼女と同じことを既にやってし
まっている可能性が高いこと。そして、彼女と同じ職業だった僕の両親が、
やっぱり同じことをしていたんじゃないか?と考えてしまうこと。
僕にとっては問題作。かなり凄い作品であることは諸手を挙げて認めるけ
ど、個人的には10分間喉元にナイフを突きつけられているようなモノ。
長編じゃなくて本当に良かったと思う。
ただ、この作品および同系統の作品を含めた短編集がもし出るというのな
ら、無意識のうちにお金を払ってしまうかも・・・。そういう意味でも恐ろし
いです、コレ。身内に教師が居る人は読まない方が賢明かな?