long range

▼ロングレンジ / 伊坂幸太郎(Kindle版)

伊坂幸太郎のシングル。
書き下ろしの「ロングレンジ」に、名作「アイネクライネ」をカップリングし
ロックンロールテイストに溢れた作品。

・・・という、まるで一流アーティストの最新CDのレビューみたいな書き出しが
可能なのが伊坂幸太郎の特別なところ。ついでに言えば、Kindleシングルなの
にUnlimited対象になっておらず、有料配信オンリー。ビジネスモデルとして
ソレが成立するところも、伊坂幸太郎という特別扱いされるべき作家の真骨頂
だと思う。

アイネクライネは以前読んだ「アイネクライネナハトムジーク」でレビューし
ているので、今回は新作短編「ロングレンジ」にフォーカス。

氏の作品としては珍しく女性が主人公。
そして、登場人物の誰もがいわゆる「フツーの人」である、というのも異色。
しかし、描かれる世界は完璧な伊坂幸太郎の世界であり、シニカルなユーモア
に溢れたヒューマンミステリーに仕上がっているところが凄い。

もうこの人はどんなジャンルの文章を書いても面白いんじゃないか?と思う。
小説やエッセイはもちろんのこと、なんなら詩とか、下手すれば新聞記事とか
進行台本とか、もしかしたら家電製品の説明書なんかでも、伊坂幸太郎が書い
た文章なら絶対にニヤニヤ出来る自信があるなぁ、今現在。

そして前にも書いた覚えがあるのだが、伊坂幸太郎はKindleシングルをもっと
短いスパンでコンスタントに出すべき。書き下ろしの短編はファンを狂喜させ
るし、初めて伊坂幸太郎に触れる読者もカップリングで過去作品にも触れるこ
とができるのだから、効果は絶大。そしてファンならちゃんと「アルバム」
購入する。心配せずに毎月どーぞ!