突然発売された真梨幸子の電子書籍。
いわゆる“自費出版”に近いかたちのリリースで、作者本人の体験に基づいた
短編を20以上集めたもの。どちらかと言えばエッセイ集なのだが、タイトルに
「怪談」とある通り・・・。
真梨幸子はいまや押しも押されぬ「イヤミス」の第一人者であり、人間の悪意
を描かせたら彼女の右に出る作家は皆無。もはや孤高の存在であり、僕の中で
は既に教祖。新たなリリースが発表される度に、「幸子サマの新作」と崇め、
全てを速攻で購入する始末なのだけど・・・。
ずっと気になっていた彼女のバックボーンが、かなり赤裸々に記載されている
ところが凄い。こんな事実を、かんたんに発表しちゃっていいんだろうか?と
こちらが心配になるくらい生々しい。そして、あれくらい波瀾万丈な幼少期を
過ごしたのであれば、彼女が書く作品に“異様なまでの悪意”が内包されてしま
うのも仕方の無いこと、と納得。というか、これは「必然」だったのだ、とい
う思いを強くした次第。
昔何かの作品のレビューで「この作家の精神状態が本当に心配」と書いた記憶
がある。おそらく今の彼女が出来上がるまで、この作品に書かれたようなある
種壮絶な出来事が多々あり、その上で形成された屈強な精神が極上の悪意を創
り出している、という気が。こちらが心配しても、それはきっと全くの無駄。
真梨幸子が真梨幸子たる由縁が、この作品の随所に散りばめられている。
いわゆるホラー作品とし見れば、決して怖い話では無いのかもしれない。
しかし、ここに載っている全ての作品があの幸子サマの実体験と考えると、そ
こらへんのホラーが全て吹き飛んでしまう程の怖さを感じる。間違い無く一般
向きの作品では無いが、ファンなら絶対に一読しておくべき。この作家はきっ
と今後も恐ろしいまでの悪意をこちらに提示してくれる、と確信出来るハズ。
この作品、リリースは電子書籍のみで、更にはUnlimited扱い。であるから、
商業的な成果を期待して発売されたモノでは無く、マニアとしては感謝しか無
いのだけど、一点だけ苦言。
・・・できれば、縦組みの構成にして欲しかった。まぁ、大きな問題では無いの
は明らかなんだけど(^^;)。