沈黙のパレード

▼沈黙のパレード / 東野圭吾

東野圭吾の新作は6年ぶりガリレオシリーズ。しかも長編
前作「禁断の魔術」のエピソード後、米国に渡った天才物理学者・湯川学
そこから月日は流れ、帰国した湯川先生は教授に、その親友の刑事・草薙
本庁捜査一課の警部にめでたく昇進。そんな折に起こった事件は、静岡県の
ゴミ屋敷の火事。焼け跡から発見された2体の遺体が巻き起こした事件は、
草薙の心を今も抉る過去の事件と関連していた・・・というお話。

・・・いやぁ、すげぇわ(^^;)。
登場人物がやたら多く、加えてかなり複雑なストーリーなのにも関わらず、
読書中に混乱を全く覚えない。それだけ物語の「芯」がしっかりしており、
様々に展開される心情描写に異様なまでの説得力がある。さらにこのシリ
ーズではお馴染みの化学物理のエッセンスもしっかり加えられ、その上
でラスト近くには最上級と言って差し支えの無い見事などんでん返しをぶ
ち込んでくる。東野圭吾の良いところが全て入った作品、と表現するのが
いちばん正しい気がする。

そして小憎らしいのは、ひっそりと過去作品とのリンクを作っていること。
いつもに比べて事件に積極的なガリレオ先生の様子を不思議に思っていた
のだが、それで全ての納得がいった。

ただし・・・。
これはガリレオシリーズの長編全般に言えることだが、導入から展開に入
るまでの物語が非常に「重い」のも事実。特にこのパレードは他のシリー
ズ作品と比較しても格段に重い。以前読んだ「さまよう刃」のような重さ、
と言えば解って貰えるだろうか?

ただ、ラスト近くまで読んでしまえば、そういうシーンが絶対必要であっ
た、ということに気付く筈。日本ミステリー界のトップに相応しい、入魂
の作品だと思う。もちろん、オススメ。早く映画化してくんないかな?