#仇討ちの葛藤
先日の福岡出張の帰り、空港でSちゃんがくれた文庫。どうやら既に
読んでいた本を買ってしまったらしい(^^;)。ということで軽く読み始
めたのだが、そんな気持ちで読むべき本ではなかった・・・。
20XX年、「復讐法」が成立した日本が舞台。復讐法とは「犯罪者か
ら受けた被害内容を合法的に刑罰として執行できる権利」。裁判で
この法の適用が認められた場合、被害者(またはそれに準ずる者)は
旧来の法に基づく判決か復讐法かを選べる。ただし、復讐法を選んだ
者は、「自らの手」で刑を執行しなければならない・・・。
連作短編の体。
復讐法執行権利者として登場するのは、息子を惨殺された父親、自ら
の母親を娘に殺された女、通り魔に近しい人たちを殺された複数の被
害者たち、一人息子を著名な霊能者に殺された母親、両親に妹を餓死
させられた兄。どのケースも一筋縄ではいかないのは勿論だが、何よ
りも復讐法執行・・・つまり仇討ちを決意し、合法とは言え「殺人」を
犯そうとしている人たちの心の葛藤があまりにリアル。
自分がもし「復讐法」実行の権利を与えられたら、という事態を想像
せざるを得ない内容。故に読後感もサイアクだし、読み終わった後に
長い間どんよりした気分が残る。ただ、これは読んでおくべき本だ、
と思ったのも紛れもない事実である。
小林由香はコレがデビュー作らしい。処女作でこんな凄いモノを書い
てしまったら、後が本当に大変な気がするなぁ・・・。