史論‐力道山道場三羽烏

#プロシタン通信


▼史論‐力道山道場三羽烏 / 小泉悦次

プロレス史探求家として高名な小泉悦次氏の著書。
G SPIRITSでそれぞれ短期集中連載された「ショーヘイ・ババのアメリカ武者
修行」「カンジ・イノキのアメリカ武者修行」「キンタロウ・オオキのアメリ
カ武者修行」の3篇の記事を大幅加筆した上、プロローグエピローグを足し
て構成されたもの。

僕が「プロレス史」に大きな興味を持つようになったのは、かつてネット上で
Joe Hooker Sr.氏のウェブサイト「プロシタン通信」に出会ったから。そこで
読めた文章は正しくで、貪るように全文を読破。その後はJoeさんにメール
までしてしまい、Joeさんの発行するファンジンの読者にまでなった。

小泉さんの文章からはその流れ(?)を大いに感じる。
事実は事実として整然と並べた上に、絶妙のタイミングで仮説をインサートし、
最後にはしっかりした文章で意見を述べる、という説得力に溢れる展開
プロレスで言えば間違いなくストロングスタイル。それも、人を惹き付けまく
って止まない、全盛期の猪木のファイトに酷似したスタイルだと思う。このス
タイルはプロレスだけでなく、全てのドキュメント作品に有効な気がする。

この本では力道山道場若手三羽烏と呼ばれた猪木・馬場・大木の海外武者修行
時代にスポットを当て、その動向を詳細に解説。3人を均等に扱っているのだ
が、この作品の主役金一(キム・イル)こと大木金太郎である、という気が
してならない。そこに狙いがある気がするのだが・・・。

G SPIRITSでの連載時も夢中になったのだが、こうやって一冊にまとまると更
におもしろくなるのが不思議。意外だったのは小泉悦次氏の著作が、やや特殊
な大作である「プロ格闘技年表事典」に次いで2作目であること。これまでの
文章をまとめて貰っても良いし、書き下ろしでもかまわない。もっと大量に、
果てしなく著作を発表してくれることを強く願う。

堪能させていただきました! 玉稿、まことにありがとうございます!