#旧・イヤミスの女王
湊かなえの新刊。
さて今回はどんな方式で来るかと思いきや、まさかの原点回帰、イヤミスが
展開されている。名作「告白」と同様の独白形式、否が応にも期待してしま
ったのだが・・・。
カリスマの女性美容整形外科医が、ある少女の自殺に纏わる話を関係者に順
にインタビューしていく話。それぞれが生々しく、ドロドロした人間臭い話
が展開される。インタビューが終了した段階で、彼女の中には一応決着が付
くのだが、果たしてそれが正しいのかどうか・・・という内容。
僕が湊かなえに惹かれたのは、当時日本一とも言われた「人間のイヤな部分」
の描写力。イヤミスというジャンルを切り開いたのは明らかにこの人であり、
その勢いに圧倒されてあっという間にマニアになり、ここまで全ての著作を
読んできたのだが・・・。
どうやら、僕はもう湊かなえにイヤミスを望んでいないらしい。
この人キッカケでイヤミスにハマった僕だが、その分野なら既に他の作家の
方がもっとテクニカルで心に刺さる文章を書いている。ソレに比べると今回
の作品の印象はあまりに中途半端。奥歯にモノが挟まったかのような感じが、
読了後もずっと続いている。
湊かなえが好きな作家であることは一生変わらないと思うけど、出来るなら
「ブロードキャスト」の続編とか、「未来」テイストの作品が読みたい、と
強く感じた次第。まさかこうなるとは思わなかったなぁ、実際・・・。