#奇跡の英国トライアングル
G SPIRITS BOOK VOL.14としてリリースされた作品。
著者の新井宏氏は、G SPIRITSで秀逸なインタビュー記事を幾つも手掛けた
人で、あのダイナマイト・キッドに最後のインタビューを敢行した日本人
として知られる人。おそらく古今東西の英国マット事情に一番あかるいプ
ロレスライターである。
そんな新井氏が【タイガーマスク】を書く。そうなると絶対に外せないの
は、初代タイガーマスクこと佐山サトルと一緒に時代を築いた二人の偉大
な英国人プロレスラー。もちろん、ダイナマイト・キッドとローラーボー
ル・マーク・ロコである。
佐山の新日本プロレス入門から現在に至るタイムラインの中に、キッドと
ロコの二人の人生をバランス良く織り交ぜているのがポイント。どちらか
と言えば主軸は既に故人となっているキッドとロコの二人であり、彼等の
凄まじいキャリアがストレートに入ってくる。文体は淡々としたドキュメ
ンタリーなのに、そこには確実に「熱い何か」が。恥ずかしながら、二人
が永眠する件を読んでいる時、嗚咽を交えて号泣してしまった。
『爆弾小僧』も『暗闇の虎』も、もうこの世に存在しない。
そんな揺るぎない事実を突きつけられた上で、改めてキッドとロコの稀有さ
を思い知った。
この本を書いてくれた新井氏を心の底からリスペクトすると共に、感謝の
言葉を贈りたい。「傑作」をありがとう、と。
・・・そして残された佐山先生、お願いだから1日でも長く生きてください。
『黄金の虎』は、僕らの最後の牙城なのだから。