#Forever Young
湊かなえの新作は2014年にリリースされた『山女日記』の続編。
今回も連作短編の体を取っており、それぞれの【事情】を抱えながら登山を
する様々な女性たちのエピソードが描かれている。
以前の湊かなえであればこの【事情】の部分に居たたまれなさを感じる作品
が多かったのだけど、今回は考えさせられなかがらもちょっとした清涼感が
味わえる作品にまとまっている。湊かなえがイヤミスだけに頼らない作風に
なってから随分時間が経ったが、この作品でそれが一番良い形に昇華した気
がする。いや、お見事です。
心に残ったのは最後の2篇。
大学時代の親友同士の往復書簡の内容は、現実世界で実際に起こった災害が
ポイントになっており、共感度が半端ではない。僕自身も彼女たちの「山」
を別の何かに置き換えて読んでしまい、途中心が苦しくなったほど。しかし、
物語の落とし処が本当に絶妙で、読後は気持ちがやや前向きになったかも。
湊かなえ・熟練期の傑作、と評価します。
もちろん登山好きな人もぜひ!