凶犬の眼

▼凶犬の眼 / 柚月裕子(Kindle版)

柚月裕子「孤狼の血」シリーズ最新作。
前作で亡き者となった悪徳刑事の意志を継いだ若きマル暴刑事・日岡のその後
が描かれている。ちなみに舞台は平成初期、暴対法施行前の時代。

期せずして警察組織の秘密を握り、マル暴として生きて行く決意を固めた日岡
だが、敢えなく左遷。山間部の駐在として、平和ながらも悶々と過ごす日岡が、
ある日とんでもない裏社会の大物と遭遇して・・・という物語。

前作よりも強調されているのが、「任侠」という思想。
現代のコンプライアンス的に考えれば、決して褒められる世界では無いのだが、
やはり“男”としてどうしようもなく惹かれてしまうダークワールド。僕らの世
界でもままある「清濁併せ呑む」現場が実に効果的にデフォルメされているか
ら、共感度はかなり高い。

・・・まぁ、共感するのはたぶん男性読者だけだと思うのだが、コレを書いてる
のは女性なんだよなぁ、実は(^^;)。もしかしたら任侠道とは、女性にもしっ
かり響く思想なのかもしれない、と感じた次第。

これは次作に期待大!・・・とか書きたいのだが、コレ以降はいわゆる暴対法の
時代。そうなっちゃったら、ここまで一般を惹き付けるエピソードは激減しち
ゃうかも・・・。

でも、続編はあって欲しい!
そして個人的な柚月裕子強化週間はまだまだ続きそう。

孤狼の血

▼孤狼の血 / 柚月裕子(Kindle版)

柚月裕子作品。
「盤上」を読むつもりだったのだが、なんか凄そうな映画の予告編を観てしま
ったため、かんたんに予定変更(^^;)。第69回日本推理作家協会賞を受賞した氏
の出世作、「孤狼の血」を読むことに。

・・・いや、驚いた。
あまりに本格的なヤクザ小説が展開され、アタマがクラクラする程。
主人公こそ刑事・・・それもズブズブの悪徳刑事を上司に持つ大卒新任・・・だが、
基本線は昭和末期の博徒たちの物語。ちょっと間違ったら無駄になりそうな
暴力団の組織背景が事細かに記載され、まるでノンフィクションのようなリ
アリティが溢れている。

正直言えば、僕がヤクザ関係の作品で読み込んだのはヤングマガジンで連載さ
れていた「代紋TAKE2」くらいだし、男系の週刊誌で特集されるヤクザ記事を
愛読する習慣も無い。つまりこの手の作品に殆ど耐性が無いのだが、とにかく
グイグイ引っ張られ、翻弄された。おかげでラストがやたら意外(^^;)。後から
考えれば全然読めそうなオチなのに、完全にしてやられた、という状態。

・・・オンナなんだよなぁ、柚月裕子って(^^;)。
映画の記者会見を報じたページに写真が載っていたが、スラッと背の高くイン
テリジェンス感の溢れる姿に再び衝撃を受けた。こういう人がこういう小説を
書く、というギャップ。只者じゃないな、この作家。

久々に出会った「凄い」作品。
現在続編を読んでいるのだが、残りもうあと3ページ(^^;)。そちらのレビュー
は明日にでも。映画ももちろん観に行くつもりです、ハイ。

朽ちないサクラ

▼朽ちないサクラ / 柚月裕子(Kindle版)

2018年の本屋大賞で次点に付けた作家が柚月裕子。
いろんなところでよく目にする作家なのだが、これまで全く読んだことが無い、
ということに気付き、遅ればせながら著作をチェック。本当ならノミネートの
「盤上の向日葵」をチョイスすべきだったのだけど、まずは好きなジャンルで
ある警察モノから、ということで。

初めての作家の場合、作品のあらすじをざっくりまとめるクセがある僕だが、
今回はパス。何故かというとこの作品、ストーリーがバンバン展開するジェッ
トコースター形式。大したことの無い(なくもないけど^^;)ハズの事件を皮
切りに人が次々と死んで行き、最終的にはとんでもなく大きな事件に化けて行
く、という感じ。サマリーにするとそれらを全て説明しちゃいそうなので(^^;)。

緊迫感溢れる展開と、ある種ドラマチックな文章はかなりイケてる気がする。
ミステリー好きなら絶対に惹かれると思うし、そういう意味での才能はやたら
と感じるのだが、この作品のまとめ方はちょっと強引(^^;)かも。「え〜っ?」
という程では無いにせよ、ラストがやや消化不良なのは否めない。

・・・だけど、この作家を否定する理由が僕には無い。
初めて読む作家でここまで入れ込めたのは久しぶりだし、系統の違う作品も
多々あるようだから、それらも片っ端から読んでみたい、と思った。そもそ
も、そういう作家でなければあの本屋大賞にはノミネートすらされない、と
思うので。

次は「盤上」を読む。将棋の話、というのにやや尻込みしちゃうけど(^^;)。

ニッポンラジカセ大図鑑

▼ニッポンラジカセ大図鑑(Kindle版)

こないだ読んだカセットテープと懐かしオーディオのMOOKに触発され、
関連する書籍を探ってみたところ、Unlimited扱いで究極のカタログ本を
発見。タイトル「ニッポンラジカセ大図鑑」。

こちらは「オーディオ」という大きなくくりではなく、「ラジカセ」と
いう日本の誇るコンパクト複合型音響機器に特化した内容なのが潔い。
チョイスも正に絶妙であり、ヘビーに使っていたあのラジカセや、あの
頃は手が届かず、憧れまくった名機が山ほど掲載されている。やっぱり
70年代後半から80年代前半にかけての機種がやたら惹きが強く、正直
何台かどうしても今入手したいラジカセが出てきた程。

具体的には↓↓コレ。

SANYO MR-V8。
愛称は「おしゃれなコンポ(と呼ばれたい)」で、当時爆発的に売れて
いたSANYOのおしゃれなテレコ・MR-U4の上位機種に当たる。出来れば
コレと同じブルー筐体が欲しいのだが、オークション等にあまり出てこ
ないのが痛い(^^;)。入手困難なんだよなぁ、実は・・・。

・・・しかし、仮にこのラジカセを手に入れたとして、何に使うか?という
のが大きな問題(^^;)となる。物理劣化を考えれば、カセットデッキ部は
ほぼ使えないだろうし、そもそもウチにはもうカセットテープが1本も
存在しない。そしてラジオに関してはJ-WAVEの開局以降聴く習慣すら
無い。となると、外部入力端子(AUX)に最近のシリコンオーディオ
機器を繋いで使用する、くらいしか無いのだが(^^;)。

・・・それでも欲しいんだから、この気持ちの高揚はヤバい(^^;)。
あるとき突然集め始めたフィルムカメラの二の舞は避けなければ・・・。

かがみの孤城

▼かがみの孤城 / 辻村深月(Kindle版)

辻村深月作品で、2018年本屋大賞受賞作品。
今や本好きには直木賞以上に価値がある、とされる本屋大賞に於いて、二次
投票の結果が2位にダブルスコア以上の大差。ならばまず読まねば!というこ
とで、電子書籍版を購入してみた。

共通の問題を持つ7人の中学生。ある日、彼ら・彼女らの部屋の鏡が輝き始め、
そこに手をかざした途端、鏡の中に吸い込まれていく。くぐり抜けてみるとそ
こは城の中で、オオカミの面を被った少女・・・オオカミ様・・・が待っていた。
オオカミ様は彼らにある課題を出す。滞在時間は毎日9時〜17時、課題達成の
猶予は1年。あまりに不可思議な状況に戸惑いながらも、7人の中に絆が生まれ
て・・・という内容。

ジャンルで言うのなら、ファンタジーと言うより他無いのだが、この子たちの
ほぼ共通の問題というのが「不登校」、いわゆる引き籠もり。原因は様々だが、
行きたくても学校に行けない子たちの心模様があまりに切なく、故にファンタ
ジーというジャンルを軽く飛び越す。極上のヒューマン小説、という印象の強
い作品。

全ての場面の全ての台詞がとにかく心に突き刺ささり、随所で心がドラムを鳴
らす。途中、「イジメ」という絶対に無くならない「悪」について、深く考え
込んでしまい、ところどころで読書が止まってしまうほど。それでも約3日で
読破してしまうのだから、この作品の吸引力はやたら凄まじい、ということ。

もちろん、お得意のミステリー要素もあるのだが、その部分は前半でおおよそ
の状況が読めた。しかし、オーラスの部分はコチラの予想の一つ上を行くオチ
が用意されており、読了後は大いに唸った。

こりゃあ、文句無く本屋大賞取るよな、と。
ファンタジー・ヒューマン・ミステリーの3要素が絶妙に絡み合い、物語とし
て見事に昇華する。正直、この作品が取らなきゃウソだな、とさえ思う。

しかし・・・。
ある種の・・・いや、ハッキリ言えば現在進行形で不登校の人たち、そしてイジメ
にあっている人たちは、問題が解決するまで読まない方が良い気がする。
登場人物たちには「友だち」が存在するが、下手すれば彼らは仲間や理解者の
不在を改めて認識し、絶望してしまうかもしれない。そこだけが本当に心配。
そんなことを思うのも、この作品が凄い、ということなのだろうけど・・・。