シークレット書籍「文庫X」

・税込み810円
・ノンフィクション
・500ページ以上

判明している事実はこれだけ。
岩手県盛岡市「さわや書店フェザン店」が企画し、全国的な拡がりを見せつ
つある「文庫X」。僕も東京駅の三省堂で見掛け、買おうかどうしようか迷った
末、実はまだ手に取っていない。

さわや書店オリジナルの手書き表紙には本屋特有オススメ文言が多々。
著者もタイトルも出版社もハッキリさせていないにもかかわらず、この本が
やたら売れているらしい。凄いのは、このご時世でネタバレして当然の詳細が
ネットに殆ど流れていないこと。売り主も買い主も、ちゃんと「暗黙の了解」
を理解している。プロレスに通づるな、この企画♪

書店発の新しい本の売り方として、非常に秀逸だと思う。無論、僕もコレに乗る
つもり。明日にでも買いに行く!

興味のある人は下記の取り扱い店舗一覧をチェック!
参考:(2016/10/11訂正)「文庫X」公式取扱書店一覧(Twishot)

ハーメルンの誘拐魔

▼ハーメルンの誘拐魔 / 中山七里(Kindle版)

「ヒポクラテスの憂鬱」後半にちょっと登場した古手川刑事の上司、犬養隼人
僕が中山七里にハマったのは刑事犬養隼人シリーズ「切り裂きジャックの告白」
であったため、その登場に「うおおおお!」という感じになった。アチラ読了
の後、条件反射で犬養タイトルロールを読みたくなり、Kindleストアを覗いた
ところ、しっかり出てるよ新作が(^^;)。文庫まで我慢できずに購入しました・・・。

本当は恐ろしいと言われるグリム童話の中でも、その不気味さ恐ろしさ、そ
して救い様の無さに定評のある「ハーメルンの笛吹き男」を元ネタに繰り広げ
られるミステリー。次々にさらわれるのは全員女子高生、そして彼女らには全
員に共通点があって・・・という感じで展開される大規模な誘拐事件の顛末を描い
たもの。

犬養シリーズはどの作品もやや重いモノが多いのだが、今回も相当な「重さ」
現実世界でも実際に起こった「子宮頸がんワクチンの副作用(副反応)」とい
“薬害”がテーマとなっており、読中に始終どんよりした気分になる。娘も無
く、何なら女性でも無い僕でも漠然とした怒りが沸いてくる程のリアリティ
やはり極上。最初から最後まで持続する緊張感もさすがである。

ただ、今回は珍しく全体の半分を読んだところで犯人の目星がついた
“どんでん返しの帝王”の異名を持つ中山七里の作品としては珍しい事態なのだ
が、この作品ではテーマ寄りのスタンスをチョイスしたのだと思う。この件に
ついて何も知らなかった僕のような人たちに関心を持たせた段階で、目的は果
たされているんだろうなぁ、きっと。

ところで、「ハーメルン」が伏線として機能していない、有効で無い、という
書評が幾つかあるが、“社会的な嘘”“それに引き摺られる子どもたち”が相対
的に描かれている段階で充分なモチーフ。正直、そこに突っ込む必要は全く無
いと思うのだが・・・。

テーマがテーマだけに、読む人を少し選ぶ傾向があるかも。
社会派ミステリー好きには鉄板でオススメしておきます。

ヒポクラテスの憂鬱

▼ヒポクラテスの憂鬱 / 中山七里

何気に中山七里強化月間。
前作の「ヒポクラテスの誓い」やたら面白かったので、思わず続編をハード
カバーで購入。本日よりWOWOWでオンエアされたドラマが始まる前に、無事
に予習完了!

前作同様、読み応え抜群の法医学ミステリー
新作も連作短編なのだが、全てのストーリーに共通のキーワード「コレクター」
が絶妙に絡み、ちょっとした長編を読了したような手応えが。そして登場する
“遺体”の状況バラエティに富み、起こる事件もがさらに深くなっている。
さらに主人公の医師・栂野真琴と、中山七里作品のロースターである刑事・
古手川和也の間にロマンスの予感が。いやぁ、全部入りだな、この本♪

もしかしたらこのシリーズ、医療ミステリー大定番になる可能性大。
法医学をテーマにした他作品と比較しても、完成度は群を抜いて高い気がする。
次作が出たらすぐ読んじゃうな、きっと。

・・・WOWOWの連続ドラマWについてはまた稿を改めて。

暗闇の虎と東京プロレス

▼G SPRITS Vol.41

本日発売のMOOK「G SPIRITS vol.41」凄い
巻頭には初代ブラックタイガーこと“ローラーボール”マーク・ロコ2万字イン
タビュー。言われてみれば知名度は抜群のブラックなのに、これまでそのサイ
ドストーリーが語られることは無かった。現在のロコを捕まえたG SPIRITSの
スタッフ感謝すると共に、最高のリスペクトを表したい。

それだけでなく、今号の特集は「東京プロレス」
本当に“伝説”となっているアントニオ猪木vsジョニー・バレンタインのカード
を組んだ幻の団体について、猪木を始めとしたレスラーや団体関係者がインタ
ビューに応えている。

上記の2本に加え、佳境に入った連載「WWE前史」「リスマルク特集」など、
今回は飛ばすべきトピックが一つも無いすばらしい構成。出版形態はMOOKだ
が、これはもう上質な研究書である。

このMOOK、本当に末永く続いて欲しい
リリースされるのであれば、どこまでも購入するつもりなので。

東京二十三区女

▼東京二十三区女 / 長江俊和(Kindle版)

お馴染みKindleストアのリコメンド作品。
長江俊和という作家の作品を読むのは初めてなのだが、その名前にどこか聞き
覚えアリ。調べてみたら、CXのカルト番組「放送禁止」の監督・脚本を務めた
演出家。あの番組の“逼迫する怖さ”に惹かれまくっていた覚えがあったので、
事前の期待値充分な状態で読み始めた。

・・・フリーライターの女性が先輩の男性と共に東京23区を巡る話。
今回登場するのは板橋区・渋谷区・港区・江東区・品川区の5区で、それぞれ
の区の“過去の因縁”が現代の事件にリンクする形式の静かなるホラー。

とにかくゾクゾクくる怖さに溢れており、ホラーとして秀逸なのは間違いない
のだが、それよりも各区の過去の蘊蓄の鋭さに思わず唸ってしまった。
「なぜお台場に”お”をつけるか?」とか、「渋谷の地名に”橋”が多いのはなぜ
か?」とか、「なぜこの場所は”深川”と呼ばれるのか」etc…。

東京で生まれ、人生の9割を東京で過ごして来たハズの僕が知らない知識が
存分に詰め込まれており、それを知ることが出来ただけでも読んだ価値アリ。
充実した読書をさせていただきました!

残り18区をフィーチャーした続編を期待すると共に、映像で観たい作品。
作者は以前CX系で「TOKYO23区の女」という恋愛系ドラマの一篇を演出して
いるが、ぜひこちらを連ドラに。深夜枠でもいいので♪