日本ローカル鉄道大全

#老後の目標


▼日本ローカル鉄道大全 / 櫻田純

いろんなジャンルの【オタク】を経験している僕が、これまでにただの一度
もハマっていないのが「鉄道」。子どもの頃にブームだったNゲージHOゲ
ージにもハマらなかったし、カメラが趣味だった頃も鉄道写真には手を出さ
なかった。もちろんこれから先も鉄道との縁は薄いと思うのだが、唯一興味
があるのがこの本に描かれている世界

日本全国の有名(?)ローカル鉄道が紹介されている本で、その数なんと
78路線(たぶん)。これだけの数を入れるので、それぞれの路線の紹介は
殆ど1ページ、多くても見開きなのだが、どこの路線も写真が非常に秀逸
たった1ページだけで、どの電車にも乗ってみたくなるくらい。

著者の櫻田純氏は、鉄界では超有名な偉人らしいのだが、皆に尊敬される
理由が本当に良く解る。コレは乗ってみたい!、と全部思っちゃったのだ
から凄い。

現実、ここで紹介されている78路線の中で乗ったことのあるのは会津鉄道
のみ。多感な時期に小湊鐵道のそばに住んでいたにも関わらず、あの電車
を利用したことはただの一度も無い(^^;)。だって、クルマで行った方が早
んだもの、全然(^^;)。

ということで、老後の目標が出来た。
この本をガイドにして、スタンプラリーの様に北から完全制覇を目指す!
ソレの紀行文をブログに書いたら、楽しいだろうなぁ、きっと♪

・・・お願いだから、それまでは廃線にならないで欲しいです、各線。

“黄金の虎”と”爆弾小僧”と”暗闇の虎”

#奇跡の英国トライアングル


▼”黄金の虎”と”爆弾小僧”と”暗闇の虎” / 新井宏

G SPIRITS BOOK VOL.14としてリリースされた作品。
著者の新井宏氏は、G SPIRITSで秀逸なインタビュー記事を幾つも手掛けた
人で、あのダイナマイト・キッド最後のインタビューを敢行した日本人
として知られる人。おそらく古今東西の英国マット事情に一番あかるいプ
ロレスライターである。

そんな新井氏が【タイガーマスク】を書く。そうなると絶対に外せないの
は、初代タイガーマスクこと佐山サトルと一緒に時代を築いた二人の偉大
な英国人プロレスラー。もちろん、ダイナマイト・キッドローラーボー
ル・マーク・ロコである。

佐山の新日本プロレス入門から現在に至るタイムラインの中に、キッドと
ロコの二人の人生をバランス良く織り交ぜているのがポイント。どちらか
と言えば主軸は既に故人となっているキッドとロコの二人であり、彼等の
凄まじいキャリアがストレートに入ってくる。文体は淡々としたドキュメ
ンタリーなのに、そこには確実に「熱い何か」が。恥ずかしながら、二人
が永眠する件を読んでいる時、嗚咽を交えて号泣してしまった。

『爆弾小僧』『暗闇の虎』も、もうこの世に存在しない。
そんな揺るぎない事実を突きつけられた上で、改めてキッドとロコの稀有さ
を思い知った。

この本を書いてくれた新井氏を心の底からリスペクトすると共に、感謝の
言葉を贈りたい。「傑作」をありがとう、と。

・・・そして残された佐山先生、お願いだから1日でも長く生きてください
『黄金の虎』は、僕らの最後の牙城なのだから。

古惑仔

#ノワール短編


▼古惑仔 / 馳星周(Kindle版)

Kindle Unlimitedでまだ読んでいなかった馳星周作品。
特に何も考えずにチョイスしたのだが、なんとこれが氏には珍しい短編集
ちょっと面食らいましたよ、ええ。

改めて。
全6篇からなる短編集。主役の殆どは日本で暮らすワケアリアジア系外
国人かその関係者で、おおよそは違法滞在の中国人。野心を持って来日し
たにも関わらず、敢えなく夢は破れ、最悪の状況に陥る人たちの様子が、
バリエーション豊かに描かれている。

「不夜城」に代表される馳ノワールであることは間違い無いが、登場人物
レベル明らかに低い。他の作品に登場する中華系マフィアたちはある
意味で恐怖の象徴であったが、今作に出てくる人たちは全員がそこまで行
かない普通(?)の違法滞在者。もちろん馳作品だから、むごくてエグい
場面の多々ある物語なのだが、主軸は間違い無く【悲哀】。こういう方法
で描かれるノワールの方が、もしかしたらリアルなのかもしれない。

タイトルの「古惑仔」には、「チンピラ」というサブタイトルが付いてい
るのだが、正直この作品の登場人物たちは皆チンピラ以下の最下層な気が
する。彼らの様を読んで僕がいたたまれなくなるのは、同じく自分がチン
ピラ以下だからなのかなぁ・・・。ちょっと複雑。

白鳥とコウモリ

#ザ・ミステリー


▼白鳥とコウモリ / 東野圭吾

東野圭吾新作
コロナ禍の影響か、遂に過去作品の一部が電子書籍化された東野作品だが、
新作はやはりソフトカバーオンリー。まずは書店でそのを見て度肝を抜
かれた。「白夜行」までいかないかもしれないが、一見しただけで大長編
と解る装丁。気合いを入れて読み始めた。

弁護士の変死から始まる物語。手がかりの殆ど無い事件で、捜査は暗礁に
乗り上げるかと思われたが、ある容疑者自白で事態は急展開。被害者・
加害者双方の家族も生活が一変し、世間の好奇の目に晒されてしまうのだ
が、被害者の息子加害者の娘の双方が、犯人の「供述」に全く納得が出
来ないでいた・・・という感じ。

・・・凄い
全編に張り巡らされた伏線と、あまりにリアルな加害者・被害者の感情が
交錯し、結果全てから目が離せない。とんでもない長編なハズなのに、全
くと言って良い程長さを感じず、ほぼ2日で全てを読み切ってしまった。

東野圭吾の著作はほぼ全てを読んでいるのだが、個人的にその中でもベス
ト3に入る傑作、と評価。どこを読んでも静かな緊迫感が溢れ、読中心臓
の鼓動が安定しない程。そしてこれまた久しぶりに、最後まで犯人が全く
解らない、というミステリーの王道もしっかり歩んでいる。

これぞザ・ミステリー。東野圭吾の真骨頂を、久々に堪能させてもらった。
ちなみに読後感、悪く無いどころか清涼感すら。オススメすることに何の
躊躇も無い。改めて、凄い作品です、コレ。

門茂男のザ・プロレス ≪角川抜粋版≫

#元祖暴露本


こないだ仕入れた例の稀覯本文庫の3冊を一気に読んだ。

『門茂男のザ・プロレス』シリーズ3冊で、タイトルはそれぞれ「力道山の
真実」「馬場・猪木の真実」「群狼たちの真実」。著者の門茂男とは、
力道山時代に東スポプロレス担当記者として活躍し、力道山没後は日本プロ
レスコミッションで長い間事務局長を務めたバリバリのインサイダー

佐山サトルの「ケーフェイ」やミスター高橋の「流血の魔術」以前に書かれた
プロレス内幕暴露系元祖で、オリジナルは「門茂男のザ・プロレス365」
いう8冊単行本。この角川文庫版は、そこからの抜粋である。

ここまで長い間プロレスを観ているから、仮に暴露本を読んでも今さら何も感
じない僕だが、多感な頃に365を読んだ時、そりゃあもうアタマに来た(^^;)。
小学校高学年くらいで『暗黙の了解』という概念(^^;)が染みついていた僕だ
が、これが「本」として流通している、という事実が気に食わず、完全黙殺
ていた少年期(^^;)。熱かったなぁ、あの頃は。

今読み返すと、暴露の部分も後にいくらでも出てくる他の作品に比べれば全く
大したことは無い。逆に【日本プロレス】という会社の経営に纏わる真実の部
分は今でも興味深く読める。こりゃ大人になった、ということでいいのかな?

この抜粋版も絶版であり、今では入手困難。
もし叶うのであれば、オリジナルの365全巻をもう一度しっかり読みたい。
復刊ドットコムあたりでなんとかしてくれないかなぁ・・・。