4ページミステリー

▼4ページミステリー / 蒼井上鷹

「出られない5人」が面白かったので、蒼井上鷹の他作品をあたったところ、
まぁ面白そうなタイトルの作品が目白押し。ミステリーユーモアも両方好
きな僕としては、選び甲斐のあるラインナップ。しかし、何故かチョイスし
たのがこの作品「4ページミステリー」だった(^^;)。

双葉社の雑誌「小説推理」の人気連載「2000字ミステリー」を集めたモノ。
1篇4ページ相当のミステリーが、なんと60篇も掲載されているから、そうい
う意味でのお得感(^^;)はあると思う。が、いわゆる長編にすっかり慣れた身
としてはさすがにちょっと食い足りない感は否めず。途中で投げ出しちゃう
のかなぁ、とか思っていたのだが・・・。

夢中にこそならないものの、約1週間の間コンスタントに読み続けられちゃっ
のだから不思議。1篇が4ページだから非常にキリが良く、移動中のちょっ
とした時間に1篇読む、というスタイルの読書はなかなか新鮮だった。

・・・ まぁ内容的に無理のあるトリックもあったが、概ね満足出来る内容。
なんならちょっとマネして2000字の短編を書いてみようか、という意欲まで
沸いた。無論、意欲だけで実際に書いてはいないのだが(^^;)。

ちなみにコレ、続編も発売中。取り敢えず何か1作読んだら、引き続き移動の
お供に電子書籍で持っておくのも良いかと思われます。忙しい人にオススメ!

魔力の胎動

▼魔力の胎動 / 東野圭吾

東野圭吾の新作は、間もなく映画が公開される「ラプラスの魔女」前日単
なるエピソードを集めたモノ。これ以上無いタイミングで発売(^^;)。

全5篇からなる連作短編集
ニューカマーの鍼灸師工藤ナユタが語り部となり、「魔女」こと羽原円華
と共に彼の周囲の人物・・・顧客のアスリートやクリエイター、友人、恩師・・・
たちに巻き起こる事件を解決して行く物語。もちろん各篇ごとに事件はしっか
り終結するのだが、全体にキッチリと一本のが通っており、読後はまるで長
編を読み終わったかのような満足度。さすがです、やっぱり。

ただ、ラプラスを読んだのはもう3年前で、内容もハッキリ覚えていない(^^;)。
これ幸いとばかりに、新鮮な気持ちで映画を観ようと思っていたのだが、この
本、正直逆効果(^^;)。結局ガマン出来ずに本棚からラプラスを引っ張り出して
来ることになっちゃったのだから、ラプラス所持者はそこらへん注意(^^;)。
・・・映画の楽しみ減りそうだなぁ、マジで(^^;)。

出られない五人

▼出られない五人 / 蒼井上鷹

有隣堂ヨドバシアキバ店小説コーナーで見つけた作品。
ちなみにこのお店、煽りのPOPが本当に秀逸。POP効果で購入した本が何冊
あるか解らない程(^^;)。金額にして5万以上は軽く行ってる気が・・・。

失礼ながら蒼井上鷹という作家の名前に全く覚えが無く、初めてのつもりで
読み始めたのだが、ちょっと読んだだけで妙な既視感が。文体に非常に覚え
があり、読了前に調べてみたら、ずいぶん前に読んだことのある著作を発見。
そうか、「キリング・タイム」のあの人なのか、と妙に納得した(^^;)。

内容は・・・。
ある作家が急逝し、その作家の馴染みだったバー建物の老朽化閉店する
ことに。これを受けてネット上で募集された「店の跡地での追悼オフ会」
初対面の5人が参加。マニアックで楽しい会の筈だったのに、死体やら侵入者
やらのアクシデント続出。にも関わらず、誰も地下にあるバーの跡地から
ようとしない。いったい何故?・・・という感じ。

密室ミステリーであるのは間違い無いのだが、まぁ・・・爆笑系の作品(^^;)。
登場人物の名前の付け方から、彼ら・彼女らの置かれた状況などに至るまで、
細部にクスっとさせてくれる状況を構築し、笑わせながら話を展開させて行
く。まんまと爆笑しながらも話は随所で意外な方向に向い、最終的には見事
なオチがつく、という鮮やかな構成。いやぁ、見事だと思います、ええ。

雰囲気的には、東川篤哉をさらにブラックにした感じ、と言えば適当かな?
ニヤニヤしながらミステリーを楽しみたい人、ぜひどうぞ!

がん消滅の罠

▼がん消滅の罠 完全寛解の謎 / 岩木一麻

昨年の「このミス大賞」受賞作で、その頃から読みたかった作品
ちなみにこのミス、年間1位があったり、大賞があったりするのはややこし
いので、そういうのちゃんと整備して欲しいと思いますよ、ええ(^^;)。

タイトルだけ読むと、ミステリーではなく医療系ノンフィクションを予想
してしまいそう。だけど、読み終わった後には「このタイトルしか無い!」
と思わせてくれるくらい、あまりにも本格的な医療ミステリー

これがまぁ尋常でなくガッチガチの医療ミステリーだから、もちろん専門
用語の類も多々登場する。しかし、そういう難解な部分を「上手い」比喩
で説明してくれるから、ストーリーに恐ろしい程のリアリティが生ずる。

岩木一麻という作家はこれがデビュー作であり、昆虫学者からがん研究家
に転身した、というバックボーンを持つ、言わば「ホンモノ」。だから、
書いてあることが本当かどうかは正直解らない(^^;)が、説得力もかなり
凄い。コレに加え、常人では絶対に思いつかないトリックが幾つも散りば
められているのだから、審査員ほぼ全員一致でのこのミス大賞受賞も納得。
実際、ここ数ヶ月で読んだミステリーの中ではいちばん手応えがあった
強くオススメです、コレは。

嬉しいことに、4月2日(月)、TBSで3時間ドラマ化されるらしい。
それも、結構凄いキャストで。こちらもすっげえ楽しみ!

ニャンニャンにゃんそろじー

▼ニャンニャンにゃんそろじー / V.A

リリースされた時からちょっと気になっていたアンソロジー
短編小説5篇短編マンガ4篇変則形態で、テーマはもちろん「猫」

この世には猫バカと呼ばれる人たちが多数存在するワケだが、もちろん
僕もその一人。街中で猫を見掛けたらもう黙ってられないし、猫を飼って
いる人の家に行けばどうにかして好かれようとする努力を怠らない。餌や
おもちゃで手なづけられるのであれば、その場で買い物に行くことすら全
く躊躇しない。にもかかわらず猫を飼わないのは、お別れに耐えられない
から。猫に関わらず、一生動物は飼えないだろうなぁ、と。

そんな猫バカなら間違い無く手を出しそうな本。
そして作家のチョイスもなかなかのラインナップなので、今回は目次を見
読む順番をしっかり考慮してから読み始めてみた。

まず、4篇のマンガをざぁ〜っと流し読み。
失礼を承知で言えば、益田ミリ・ねこまき・北道正幸・ちっぴ の4名は
全く知らない漫画家であり、8ページ程度の短編で評価は出来ない。ただ、
どれもいわゆるほのぼの系の絵で、正直この画風は苦手(^^;)。他の作品
を読むことは無いと思うな、コレらは・・・。

そして小説
町田康→小松エメル→蛭田亜紗子→有川浩→真梨幸子、という順番にて。

まず、町蔵こと町田康の作品は、実に彼らしい感じのシニカルなファンタ
ジー。昔イヤってほど聴いた町蔵のと殆ど変わらない世界観を保持し続
けているのが凄い。「INU」というバンドの人が猫について書いてる、と
いうのが面白いところ。

そして、小松エメルの作品は新撰組を題材とした時代小説風。この手の
小説は苦手なのだが、物語の流れが非常に良く、思ったよりもスッと入っ
て来たから不思議。ただ、アイテムとしての「猫」があまり重要でないモ
ノになってしまったのがちょっと残念。

蛭田亜紗子作品は短いながらもしっかりとしたヒューマンドラマ。こちら
はアイテムとしての「猫」が非常に重要な位置づけで機能しており、短い
ながらも考えさせられる内容。この人の他の作品、ちょっと読んでみたい
気がする。

で、このアンソロジーの目玉とも言える有川浩の作品は、「アンマーと僕
ら」のキャストによるスピンオフストーリー。アンマーは決して好きな作
品では無いのだが、この短編のストーリーの組み方は全く無駄が無く、下
手すれば本編よりも面白かったかも。最近新作の噂が全く聞かれないけど、
そろそろ動き出して欲しいなぁ、この人には。

意図的に最後に持ってきたのは、我が教祖こと真梨幸子の作品。
イヤミスの神様がどんな猫ストーリーを書くのか、かなり期待して読んだ
のだが、コレが期待を全く裏切らない真梨幸子ワールド。全体的に漂う気
怠い雰囲気はゾクゾクするし、意外性という部分でも満点に近い。後日談
を気にさせちゃうんだから、この人の実力を侮るべからず。満足です!

・・・取り敢えず、小説部分だけで判断すれば非常に良く出来たアンソロジー。
各作家のファンの人は、押さえておいて損は無いと思います。無論、猫好き
も是非!