危険なビーナス

▼危険なビーナス / 東野圭吾

「人魚の眠る家」からおよそ9ヶ月振りとなる東野圭吾の新刊。
年間で2〜3冊はかなり充実した新作を読ませてくれる大家だが、今回は
かなり時間が空いた。しかし、前作がかなり重たいテーマだったので、
このブランクは逆に丁度良い具合。勢い込んで読んでみた。

突然現れた種違いの弟の妻を名乗る人物。彼女から弟の失踪を聞かされ
獣医主人公は、彼女と共に弟の捜索に乗り出す。しかし、行動
を共にするにつれ徐々に彼女が気になり始め・・・という内容。

・・・なんというか、かなり痛快(^^;)。
エピソードは大まじめでかなりハードな内容なのだが、主人公獣医
その周辺の人たちのキャラクターコミカルに描かれているおかげで、
タッチは軽く非常に読みやすい。事件の真相もさることながら、弟の嫁
本気で惚れてしまう兄の心模様を追うのが実に楽しい。

もちろん東野圭吾だから、ミステリー部分もサイエンティフィック
恐ろしいぐらい秀逸なのだが、ヒューマンドラマ部分の面白さがコレを
軽く凌駕している。東野ミステリーでこういう状況なのは、もしかした
ら初めてなんじゃないだろうか?

間違い無く、氏の新境地
気合いの入ったミステリーマニアも、ちょっとした恋愛小説マニアも、
双方の琴線に触れること請け合い。待った甲斐あったな、9ヶ月!