わりとご無沙汰の中山七里作品。
タイトルの「ヒポクラテスの誓い」は、古代ギリシャの医師、ヒポクラテスが
医師の職業倫理について書いた宣誓文。いわゆる“戒め”の類いであり、医大と
名の付くところならどこでも1枚は掲示されている文章らしい。
冒頭、不本意な異動となった研修医に准教授は問いただす。
「この誓いの中で、患者を生きている者と死んでいる者とで区別していますか?」
と。そう、舞台は法医学教室。傑作医療マンガの「きらきらひかる」や、米国
の人気ドラマ「CSIシリーズ」等と同じ系統の、”死体の声を聴く”系の物語である。
久々に骨のある医療ミステリーを読んだ感。
専門用語も多々飛び出すが、それら全てに不自然でないサラッとした説明がしっ
かり付いてくるため、読中に混乱することはまず無い。死体を解剖する、と言う
下手すれば非生産の象徴とも取られかねない行為の重要さがヒシヒシと伝わって
来る。
それだけでなく「遺体を解剖に回す」という行為を嫌いがちな日本人のメンタル
にまでキッチリ踏み込んでおり、ヒューマンドラマとしての読み応えも充分。
さらに「切り裂きジャック」の若手刑事・古手川和也もキーマンとして再登場し
ており、いろんな意味でファンを裏切らない傑作と言って良いと思う。
これは映像で観たいなぁ、と思っていたら、10/2よりWOWOWの連続ドラマW
の枠で放映される模様。こっちも要チェック。北川景子に全てが掛かってる!